2020 Fiscal Year Research-status Report
Fine structures of reaction inter-mediates of bovine cytochrome c oxidase
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18K06092
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
月原 冨武 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特任教授 (00032277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 信也 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特任教授(名誉教授) (40068119)
島田 敦広 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80723874)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 呼吸酵素 / チトクロムc酸化酵素 / X線結晶構造解析 / 膜タンパク質 / 生体エネルギー変換 / 構造と機能 / タンパク質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
チトクロムc酸化酵素(CcO)は呼吸鎖末端酵素で、酸素の還元とそれに同期したプロトンの能動輸送を担っている。活性中心としてCuA, heme a, heme a3,CuBを有する膜蛋白質である。酸素還元反応の際にCuA, heme aを経て酸素還元中心heme a3, CuBに電子が伝達されるのに同期して、プロトンが能動輸送される。酵素反応サイクル中の中間体及び中間体類似の構造を決定して、H-経路プトトンポンプ機構を提案している。この酸素還元とプロトン能動輸送の同期の仕組みの解明を目指している。 酸素還元反応は中間体、R, A, P, F, O, Eを経て段階的に進行する。プロトン能動輸送経路は水チャネルとそれに続く水素結合ネットワークとプロトンプールで構成されている。我々は、R状態で水チャネルが開いて4プロトンがマトリックス側からプロトンプールに蓄積されると主張している。P以降の過程で電子がCuA、heme aをへてheme a3に供給される度に1プロトンずつプロトンプールから水素結合ネットワークを介して膜間腔側に輸送される。R状態(還元型)でのみヘリックスXの構造が水チャネルを開いた状態にする。P,F中間体の構造決定を完了し、これらの中間体の活性中心の構造を精密に決定し、専門誌に報告した。無損傷休止酸化型結晶でも再精密化を行って、活性中心の構造を確定することができた。 O中間体用に調製した結晶試料を解析したところ、調製法によって結晶中に少量のA中間体を含む還元型結晶、O中間体と休止酸化型を含む結晶、E中間体と休止酸化型を含む結晶が存在することが判明し、A中間体、O中間体、E中間体の構造を決定した。完全還元型結晶の再精密化を行い、プロトンポンプにとって重要な役割を果たすヘリックスXに多型構造を同定した。これらを合わせて、専門誌に投稿し査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チトクロム酸化酵素の反応機構の解明を行うために3年間では以下の結晶構造解析を行う計画を立てた。(1)休止酸化型結晶の1.30オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(2)還元型結晶の1.60オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(3)F中間体結晶の1.70オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(4)O中間体結晶の1.8オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(5)CN-結合酸化型結晶の1.60オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(6)CN-結合還元型結晶の1.45オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析、(7)休止酸化型結晶構造のX線損傷を検証する構造解析。 これらの課題のうち昨年度までに実施した(1)休止酸化型結晶は1.3オングストローム分解能、(2)還元型結晶の1.60オングストローム分解能で構造精密化、(3)F中間体結晶は1.80オングストローム分解能で構造精密化に基づいて、酸素還元における活性中心への酸素の結合からO―O結合が開裂する最初の段階の仕組みを明らかにして、論文にした。(4)O中間体結晶の1.8オングストローム分解能での混ざりを解いた構造解析では、O中間体以外にA中間体とE中間体の構造決定も行うことができた。これについては専門誌に論文投稿して、現在査読中である。 残されたCN-結合酸化型結晶、CN-結合還元型結晶、新たな休止酸化型結晶構造についてはそれぞれ10-50個の結晶を用いて収集された回折強度データの処理を終了して、構造解析を順次行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
反応サイクル中にある6種の全ての構造を決定できたが、論文化は完結していない。一連の実験で得られたA, O, Eの構造の論文は専門誌で査読中であり、これを完結するのが焦眉の課題である。 究極の目的である本酵素による酸素還元・プロトンポンプの原子レベルでの理解のために、中間体類似物であるCN-結合酸化型、CN-結合還元型の精密構造解析を行い、CuA, heme a, heme a3 及び CuBの状態変化に伴う蛋白質部位の構造変化との相関を解明する。それに基づいて酸素還元とプロトン能動輸送の共役機構を原子レベルで明らかにする。 本酵素の機能する仕組みに関する議論において、別のグループによる構造を拠り所にした我々とは異なった主張にしばしば遭遇する。しかし、その根拠になっている構造を構造データベース(PDB)に報告されている実験データを元に見直してみると、構造解析に疑問のある場合が散見される。これらの幾つかを再計算したところ明らかに誤った構造を公表しているものがある。これらが混乱をもたらしており、他のグループによって報告された構造も含めて、再精密化結果を元に、論点を整理して、CcOによる酸素還元・プロトンポンプの仕組みの統括的な論文を作成する。
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Causes of Carryover |
成果を公表する論文を投稿して現在査読が進行中であるが、出版が2021年度にずれ込むことになり、投稿料等の出版のための費用が必要なために次年度に残した。
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