2018 Fiscal Year Research-status Report
染色体ドメインを形造るグアニン四重鎖結合タンパク質Rif1の分子形態解析
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18K06102
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
森山 賢治 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (00250217)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Rif1 / オリゴマー / 天然変性領域 / グアニン四重鎖 / G4 DNA / 電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスRif1(2,418アミノ酸)がオリゴマーを形成して複数のグアニン四重鎖DNA(G4 DNA)に結合し、そのN末端領域(NTD, 1,151アミノ酸)とC 末端領域(CTD, 299アミノ酸)も各々単独でオリゴマーとしてG4 DNAに結合することは、本研究開始前に J. Biol. Chem. に報告した。その後、全長Rif1オリゴマーの微細形態をクライオ電子顕微鏡による単粒子解析で決定するため、全長Rif1の大量精製に取り組んだ。その中で、精製用エピトープタグを付加したRif1を恒常的に発現するマウスES細胞(E14-D8株)を活用したところ、この細胞から精製した方が従来の293T細胞から精製するより分解され難いことが判明した。ところが、以下の「進捗状況」に詳述するように、現状では培養細胞でのRif1発現効率が相当低いため、その大量精製は非常に困難な状況に陥ってしまった。そこで、全長ではなく、NTDとCTDの間にある長い天然変性領域(LID, 968アミノ酸)を欠失したRif1-NC(NTD+CTDの意)の単粒子解析を先ず試行することにした。上述した Rif1-NTD, Rif1-CTD, 及びRif1-NCを精製し、電顕解析担当の米国の研究協力者に送付したところ、クライオ電顕ではないが、ネガティブ染色による電顕観察を実施された。その結果、Rif1-NCは一見オリゴマーのように見えるが、不定形凝集体の可能性が高いため、凝集していないRif1-NCを何とかして大量精製して欲しいと要望された。Rif1-NCはRif1-NTDや-CTDと違って低塩濃度では細胞から効率良く抽出されないため、これまでは高塩濃度抽出液から精製してきたが、低塩濃度抽出液から精製すれば凝集し難いのではないかと期待し、実際にその大量精製に取り組み始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
クライオ電子顕微鏡による単粒子解析に供する全長Rif1オリゴマーを大量に精製するため、様々な方法に取り組んだ。上述の私の論文では、精製用エピトープタグ2種を付加したRif1をヒト293T細胞に一過性に強制発現させ、2段階のアフィニティーカラムで精製していた。しかし、これでは単粒子解析用には精製度が不十分なため、更にG4 DNAアフィニティーカラムや汎用のイオン交換クロマトグラフィー等による精製を試みたが、Rif1が希釈されるばかりで十分には精製されなかった。そのうえ、精製段階が進んでもRif1はカラムクロマトグラフィー中に分解され易く、大量精製は非常に困難と判明した。当ラボでは、精製用エピトープタグを付加したRif1を恒常的に発現するマウスES細胞(E14-D8株)も作成していたため、293T発現系と並行して、このE14-D8細胞からの精製も試みた。その結果、Rif1発現量は293T細胞に劣るものの、E14-D8細胞から抽出したRif1の方が分解され難いことが判明した。ところが、電顕観察担当の米国の研究協力者と直接打ち合わせしたところ、タンパク質濃度が5 mg/ml以上必要であると告げられた。計画当初は5マイクログラム精製してくれと依頼されていたので驚嘆と落胆の限りであった。実質的に当初目標値の50倍から100倍の量を精製しなければならず、そのためには直径 10 cmの細胞培養皿に換算して25,000枚以上必要となる。これは私の取得した研究費では賄えず、しかも25,000枚分の培養施設も無く、培地も労力も全く足りない。このような事情で、全長Rif1の単粒子解析は、その発現効率を50倍以上向上させる方法を開発するまでは見合わせることにした。一方で、クライオ電顕観察は先ずRif1-NCを対象として進めることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
プレリミナリーなネガティブ染色による電顕観察の結果、Rif1-NCは一見オリゴマーのように見えるが、それよりも不定形凝集体の可能性が高いため、凝集していないRif1-NCを何とか精製して欲しいと米国の研究協力者から要望された。Rif1-NCは低塩濃度では細胞からの抽出効率が非常に低いため、これまでは高塩濃度抽出液から精製してきたが、低塩濃度抽出液から精製すれば凝集し難い可能性が期待できる。その精製に必要な細胞の量も労力も大幅に増えてしまうことになるが、奮起すれば実施可能と判断したため実際に取り組み始めたところであり、今後も大量精製を進める。一方、全長Rif1の単粒子解析のためには、その発現効率を50倍以上向上させる必要がある。そのため、Rif1の N末端側に付加するタグを発現増強効果が見込まれる種々のタグに変更して強制発現させる。また、NTDとCTDの間にあるLID(長い天然変性領域, 968アミノ酸)内の codon usage を精査し、minor codon を major codon に置換したり、LIDに短い欠失やアミノ酸置換を導入してRif1発現効率の大幅向上を目指す。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載した事情で、全長Rif1の大量精製を一旦中止したため、その発現細胞の培養やタンパク質精製に使用する筈であった研究費を次年度に繰越すことになった。繰越した研究費は、今後Rif1-NCの発現細胞の培養やタンパク質精製のために使用する計画である。また、全長Rif1発現効率の大幅向上が達成できれば、その大量精製のためにも使用する予定である。
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