2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of lipid envionment on the functions of sarcoplasmic reticulum calcium pump
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18K06105
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カルシウムポンプ / イオン輸送 / ナノディスク / 静電的相互作用 / リン脂質 / 膜タンパク質 / タンパクー脂質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA1a)を用い膜タンパク質の機能に対する脂質環境の影響を調べるために、様々な種類、組成の脂質構成を持つナノディスクに組み込んだ標品の反応速度論的解析を行うものである。本年度は近年報告のあったSERCA1aの324番目のアルギニン残基とリン脂質ヘッドグループ中のリン酸基との間に形成、解離を起こすタンパク-脂質間相互作用の酵素活性上の役割について焦点を当てた。 COS-1細胞で発現させた野生型及びArg324変異体SERCA1aタンパク質のリン酸化中間体転換速度を、イオン強度を変えて測定し、反応速度の対数の活量係数の2乗に対するプロット(速度vs活量プロット)を行って解析した。その結果ArgをAlaやGluに置換した変異体では、プロットの傾きが小さくなり、この反応過程を促進する静電的相互作用が減少していることが示された。これはArgの正電荷と脂質ヘッドグループのリン酸基の負電荷との静電相互作用がこの過程を促進することを示していた。またSERCA1aをフォスファチジルコリン(PC)及びフォスファチジルグリセロール(PG)を含むナノディスクに組み込んで同様な解析を行ったところ、リン酸基より先の脂質ヘッドグループの静電的影響はわずかであることが分かった。次にリン基部分の電荷を失ったエチルフォスファチジルコリン(ePC)を含むナノディスクにカルシウムポンプを組み込み、リン酸基とArg残基間の静電的相互作用を消した場合の影響を調べたところ、ePC導入による速度vs活量プロットの傾きの変化がGlu置換体では野生型と比較して大きくなっており、Glu変異体では、リン酸基の電荷が消失したことにより、置換されたGlu残基の間にリンクが形成可能になったことで、このステップが促進さていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 申請時の計画では一年目に骨格筋筋小胞体由来のSERCA1aを組み込んだナノディスク標品を用い、解析を行い2年目の途中から発現させたSERCA1aを用いた解析に進むとしていた。実際には1年目に発現させたSERCA1aをナノディスクに組み込む予備実験に着手し、2年目の本年では COS1で発現させたカルシウムポンプをナノディスクに組み込んだ標品を用いて速度vs活量プロットを用いた解析ができるようになった。 本年ではこの変異体を組み込んだナノディスクを標品を用いて、近年結晶構造解析で見つかったタンパク質ー脂質間の直接的なリンクの持つ意味について、静電的相互作用を中心により詳細な解析が進めることができた。このことは当初想定していた膜の表面電荷の活性に及ぼす意味の解析だけではなく、新たな観点からのタンパク-脂質相互作用の役割についての解析が出来ていることを示している。 従って本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、まず現在進行しているArg324変異体を用いた解析を進めていく。現在の解析ではナノディスクを用いているため、変異体のCa輸送活性については測定することができないが、再構成膜への変異体の組み込みなどの方法を用いて、Ca輸送活性への脂質組成や膜電荷の影響を調べていきたい。 またArg324変異体以外の変異体、特にこれまでに私がドメイン間相互作用に対する静電的相互作用の解析に用いて実績を上げることのできた変異体をナノディスクに組み込み込み、これまでに報告している静電的相互作用の働きが膜組成を変えることによってどのように変化するのか、膜の表面電荷が膜面からどれぐらいの高さまで影響を与えているかについても解析していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予算では論文の作成のための費用を見込んでいたが、執筆開始時期がずれ込んだため、英文添削、投稿料の分差額が生じている。論文を早急にまとめて投稿する予定のため、余剰分は速やかに執行される予定である。
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