2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of lipid envionment on the functions of sarcoplasmic reticulum calcium pump
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18K06105
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カルシウムポンプ / イオン輸送 / ナノディスク / 静電相互作用 / リン脂質 / 膜タンパク質 / タンパク質-脂質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA1a)を用い膜タンパク質の機能に対する脂質環境の影響を調べるために、様々な種類、組成の脂質構成を持つナノディスクに組み込んだ標品の反応速度論的解析を行うものである。本年度は前年度に引きつづき、近年報告のあったSERCA1aの324番目のアルギニン残基とリン脂質ヘッドグループ中のリン酸基との間に形成、解離を起こすタンパク-脂質間相互作用の、酵素活性上の役割について焦点を当て解析を行った。 COS-1細胞で発現させたSERCA1aを用いてATP分解活性のCa2+濃度依存性を取ったところ、野生型とArg324変異体では低濃度Ca2+領域でのCa2+による活性上昇は大きくかわらないが、高Ca2+濃度領域における活性の抑制はArg324変異体で起きにくくなっており、その効果はAla置換よりGlu置換変異で顕著であった。このことはArg324とリン脂質との静電相互作用が、SERCA1aの内腔側へのCa2+放出過程において、Ca2+に対する親和性を下げるのに重要な役割を持っていることを示唆していた。立体構造でArg324付近の構造を見ると、この残基のすぐ近傍にLeu321があることが分かる。この残基のPheへの置換(L321F変異)はCa2+の内腔側への放出に際し、Ca2+との親和性低下を増強することを、以前我々のグループで報告していた。L321F変異で内腔側Ca2+に対する親和性の低下が起きるのは、この残基のある部位と膜貫通ヘリックスとのリンクが増強するためであると考えられていたが、今回のArg324変異体の結果もこれと矛盾せず、Arg324-Leu321領域の膜近傍での挙動がCa2+輸送機構で重要であることが示された。その他細胞質側からのCa2+結合過程においてもArg324の重要性を示す結果も得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、ナノディスクに組み込んだSERCA1a標品を用いた、タンパク質-脂質間相互作用の解析という点において、この期間に1)筋小胞体膜から取ったSERCA1aをナノディスクに組み込んだ標品を用いて、脂質環境を変え測定することによりリン脂質のリン酸部分とSERCA1との静電相互作用が重要な役割を持つこと。2)Arg324変異体を用いた解析で、Arg324とリン脂質間の静電相互作用がCa2+放出過程でCa2+に対する親和性を低下させることに働いていること。を示すことができた。これらの成果は、初期の目的が達成されたと言うに十分な結果である。 これに加え、ARg324変異体を脂質環境の異なるナノディスクに組み込み、速度vs活量プロットによる解析を進めていた。しかしながらコロナ禍による大学教育カリキュラム組み換えの負担や、私自身利き腕の手首の骨折による実験の停滞などの要因で、これを完了できなかったのは残念である。 しかしながら、当初の目標を達成し、さらに進んだ研究に入ることができているという点において、事業を延長せざるを得ない状況にあるとはいえ、おおむね順調に進展していると言えると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
延長申請が受理されたので、現在進行中である、変異体SERCA1aをナノディスクに組み込み、脂質環境の違いを速度vs活量プロットによる解析で明らかにし最終的な論文としてまとめ、査読付きのジャーナルへと投稿するつもりである。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍による教育カリキュラム組み換えによる負荷の増加と、研究代表者が手首を骨折し実験の遂行が滞った時期があったため、進捗が遅れてしまったのが原因である。 次年度早々にも先送りになった研究課題を完了し全額使いきる予定である。
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