2019 Fiscal Year Research-status Report
分子間ジスルフィド結合を介した小胞体マンノシダーゼEDEMの活性調節機構
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18K06110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 徹也 京都大学, 理学研究科, 助教 (70378529)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小胞体関連分解 / マンノシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、EDEM2とチオレドキシン様タンパク質TXNDC11が安定した分子間ジスルフィド結合により複合体を形成することを見出し、両者の複合体精製に成功した。本年度は、精製した複合体の酵素活性の検出をin vitro反応系により検出することを試みた。その結果、合成糖鎖を基質としたアッセイにより、EDEM2-TXNDC11複合体が、M9型糖鎖のB鎖からマンノースを1個トリミングし、M8B型糖鎖へ変換する活性を有することを明らかにした。これにより、①EDEM2-TXNDC11がマンノシダーゼであること、②小胞体で行われるマンノーストリミングの第一ステップ(M9型糖鎖からM8B糖鎖への変換)はEDEM2-TXNDC11複合体によって担われることの2点を実証した。また、TXNDC11と複合体を形成できないEDEM2(C558A)変異体は、酵素活性をほとんど持たないことも明らかにした。すなわち、前年度までのノックアウト実験の結果と一致して、TXNDC11はEDEM2の酵素活性に必須なパートナータンパク質であることが生化学的実験においても示された。また、内在性TXNDC11が2つの異なる分子量のタンパク質として発現していることに着目し、TXNDC11が異なる2つの翻訳開始点(M1、M58)を有していることを明らかにした。さらに解析を進めた結果、M1から翻訳が開始された場合はTXNDC11のN末端の疎水性領域は膜貫通ドメインとして機能し、M58から翻訳が開始された場合は同じ疎水性領域がシグナル配列として機能することを見出した。以上の成果をまとめた論文を海外雑誌eLifeに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、EDEM2のパートナー分子を同定し、EDEM2タンパク質の精製とそのマンノシダーゼ活性を生化学的に検出・解析することである。これまでの解析により、EDEM2とTXNDC11が分子間ジスルフィド結合により安定な複合体を形成することを明らかにし、ジスルフィド結合に必要なシステイン残基に関してもEDEM2とTXNDC11の双方について同定した。さらに、EDEM2をTXNDC11との複合体として精製することにより、これまで困難であったEDEM2のマンノシダーゼ活性の検出に成功し、EDEM2-TXNDC11複合体が、M9型糖鎖からマンノースを1個のみ除去する活性を有することを実証した。以上のように、当初設定した本研究の目的の主要部分を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EDEMファミリータンパク質は、EDEM1、EDEM2、EDEM3の3種類から成る。ノックアウト細胞を用いた解析から、EDEM1とEDEM3は、EDEM2の作用により産生されたM8B型糖鎖を基質とすることが示唆されている。そこで、これまでに確立したEDEMファミリータンパク質の精製方法をEDEM1およびEDEM3にも適用して、両者のマンノシダーゼ活性の検出と、基質特異性について解析し、EDEM2との相違点や共通点について明らかにする。
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Causes of Carryover |
論文の査読対応実験がスムーズに進行したため、最終年度に計画しているEDEM1、EDEM3の精製と生化学実験のための消耗品代に充当する目的で翌年度に繰り越した。次年度の助成金は、タンパク質精製に必要な細胞培養器具の購入に充てる予定である。
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