2020 Fiscal Year Research-status Report
小胞型神経伝達物質トランスポーターの脂質制御機構の解明
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18K06114
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
樹下 成信 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (60646917)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グルタミン酸 / VGLUT |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞型グルタミン酸トランスポーターは神経シナプス前細胞のシナプス小胞に存在し、開口放出に向けたグルタミン酸の取り込みという興奮性シグナル伝達における重要な役割を担っている。 VGLUTにはもともとCl-による制御機構が存在し、1 mM程度ではグルタミン酸輸送はないが、2 mM程度から徐々に活性化し、10 mM以上で最大となるものである。 Cl-によるこのようなユニークな活性制御は神経細胞内で常に10 mM程度Cl-が存在する中でどうして必要な制御なのか不明であったが、2010年Neuron誌上で脂質代謝産物がこのCl-結合部位に競合することを発見し、この制御に関しては正の協働性が確認されたことから、VGLUTがオリゴマーとして機能しているのではないか。と考えていた。 このようにVGLUTはオリゴマーで機能することを生化学的に明らかにしてきたが、構造的にVGLUTがオリゴマー化しているということを証明するには至っていない。2019年に発表したVGLUTホモログタンパク質の構造はモノマーで構造解析され機能についてもアロステリックな制御因子は発見することはできなかった。2020年に報告されたSicenceの論文においてもモノマーとして構造が示された。 今回我々は脂質の添加に伴いオリゴマー化することを明らかにすることができた。さらに特定脂質により活性制御もしていることを明らかにした。生体脂質は大きく分けてグリセロリン脂質とスフィンゴ脂質に大きく大別されるが、その両方がVGLUTの制御に関わっていた。今回の新たな発見は今後VGLUTのオリゴマー状態での構造解析を行う上でも非常に有益な情報となるだけでなく、他の小胞型神経伝達物質トランスポーターについても同様の機構が備わっている可能性が考えられる。本年度はこれらの解析について論文化に向けた詰めの実験を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度脂質制御機構に関して論文化に向けて詰めの研究ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
論文を提出するとともに、オリゴマー状態での構造解析に向けた研究を行う。
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Causes of Carryover |
5000円以下の金額で必要試薬等の金額に届かず来年度合算して使用することとしたため。
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