2019 Fiscal Year Research-status Report
O-GlcNAc修飾を介したスフィンゴ糖脂質代謝制御機構の解明
Project/Area Number |
18K06120
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
郷 慎司 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10458218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / O-GlcNAc修飾 / 糖鎖 / シアル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜構成脂質の一つ「糖脂質」はその糖鎖部分の構造の違いによって多様な分子種が存在し、その発現異常は様々な疾患につながる。各糖脂質の真の機能解明には、従来までの糖転移酵素遺伝子改変だけでは不可能な、糖脂質の緻密な量的・質的改変技術が必須である。 申請者はタンパク質翻訳後修飾の一つ、“O-GlcNAc修飾”が糖脂質代謝を制御していることを見出し、その詳細な分子機構の解明と応用利用法の開発を目指している。 生体内のO-GlcNAc修飾の制御機構を詳細に解析していく中で、関連酵素、ドナー基質量を変動させると恒常性維持機構が働き、O-GlcNAc修飾の変動を最小限に抑えようと動くため、O-GlcNAc修飾を変動させ表現型を解析する場合に、その方法、タイミング、細胞の種類・コンディション等の詳細な設定が必要であり、その検討を行ってきた。 中でも「N-アセチルグルコサミン」処理によって安全かつ簡便に細胞のO-GlcNAc化を制御できるが、N-アセチルグルコサミンはシアル酸代謝、リソソーム酵素の特殊な糖鎖修飾においても重要であることから、本年度はシアル酸代謝酵素群、リソソーム酵素群の挙動の変化を解析できた。「N-アセチルグルコサミン」処理によって一部のシアル酸代謝酵素の発現変動、リソソーム酵素の翻訳後修飾量が大きく変動することが新たにわかり(第38回日本糖質学会、2019年生化学会発表)、糖脂質の代謝に様々な影響を与えることが新たにわかってきた。これらの成果によってN-アセチルグルコサミンによる糖鎖改変の応用法が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体内のO-GlcNAc修飾の制御機構を詳細に解析し、糖脂質改変をしていく中で、O-GlcNAc関連酵素およびドナー基質量を変動させると恒常性維持機構が働き、O-GlcNAc修飾の変動を最小限に抑えようと動くことがわかり、O-GlcNAc修飾を変動させ表現型を見る場合に、細胞のコンディションの微妙な違いによって、タイミングや薬剤処理時間などが、各実験回ごとに詳細な設定が必要であったためその設定に時間がかかった。現在はそのデータを基に本来の計画の解析を行っている。 また、その過程で新たにリソソーム酵素の解析の必要性が見出されたため、新たにリソソーム酵素の詳細な解析系を立ち上げるための時間が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
O-GlcNAc化を介したスフィンゴ脂質の代謝制御機構の解明のため、生合成に関わるタンパク群を解析してきたが、新たに分解系(リソソーム酵素)の解析の必要性が見出された。また、ドナー基質(UDP-GlcNAc)の代謝の分岐酵素群・代謝系との関連を詳細に調べる必要がでてきた。 今年度、O-GlcNAc化とドナー基質を競合するシアル酸代謝、リソソーム酵素糖鎖合成の経路に、O-GlcNAc化の変動が大きくかかわることが示唆されたため、今年度は(1)スフィンゴ脂質合成酵素群のO-GlcNAc化による活性制御機構の解明、(2)リソソーム酵素の発現量、活性・局在に対するN-アセチルグルコサミンの影響解析、(3)O-GlcNAc化がシアル酸代謝に与える影響に関して解析を進める。申請当初の計画に加えて、(2)、(3)の計画が加わることによってさらにO-GlcNAc化によるスフィンゴ糖脂質代謝制御機構を統合的に検証することが可能になると考えられる。研究室内にリソソーム研究者がおり、また新たに研究室に酵素活性測定の習熟者が加わったことから、知識・技術等のアドバイスを受けながら、連携して効率的に研究を進める。
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Causes of Carryover |
新規研究の消耗品で必要になり発注したが海外輸入品で納品が遅れたものの分である。すでに納品され支払い請求になっており、すぐに使用される。
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