2019 Fiscal Year Research-status Report
Defense mechanism in plant apoplastic space against plant pathogens
Project/Area Number |
18K06121
|
Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
竹田 匠 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 主任研究員 (80423036)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アポプラスト / タンパク質間相互作用 / 抵抗性 / 病原性 / イネ / いもち病菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物病原菌は多種の多糖分解酵素を植物のアポプラスト(細胞膜より外側)に分泌し、細胞壁の分解を促進している。これにより物理的障壁である植物細胞壁を部分分解し、病原菌の感染を向上させていると考えられている。病原菌由来の多糖分解酵素の構成ドメインであるCBM1(多糖結合部位)は植物の細胞壁多糖の効率的分解、および細胞壁の力学的性質の低下に大きく寄与している。これに対し、植物はCBM1の作用を抑制するシステムを有していることが推測された。本研究課題の遂行により、いもち病菌由来のCBM1と結合するイネ由来のタンパク質(CBMIP)を同定した。CBMIPはCBM1と結合することにより、多糖分解が抑制されることが明らかになった。また、CBMIP遺伝子を破壊したイネを用いて、いもち病菌への抵抗性を調べた結果、CBMIP遺伝子破壊イネは野生株に比べ、いもち病菌に対する抵抗性が低下したことが明らかになった。これらの結果より、植物病原菌が感染時に分泌する多糖分解酵素の作用を植物由来のCBMIPが阻害することにより、病原菌に対する抵抗性を向上させていることが示唆された。 植物由来のソーマチン(Thaumatin)は抗菌作用を有するタンパク質として広く知られている。これに対し、いもち病菌は3種類のソーマチン結合タンパク質(Th-BP-15k, Th-BP-24k, Th-BP25k)を用いて、ソーマチンの作用を阻害していることを明らかにした。いもち病菌由来のソーマチン結合タンパク質の遺伝子破壊株を作製し、イネへの病原性を調べた結果、これらのタンパク質が生産されないいもち病菌破壊株は野生型いもち病菌に比べ、病原性が低下していることが明らかとなった。これらの結果より、いもち病菌は植物由来ソーマチンの抗菌作用を抑制するため、3種類のソーマチン結合タンパク質を生産し、病原性を向上させていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにイネ(植物側)の病原菌抵抗性に寄与しているCBMIPの同定および作用機構を明らかにした。また、いもち病菌(病原菌側)の病原に寄与しているソーマチン結合タンパク質の同定および作用機構を明らかにした。これらタンパク質の作用機構の解明は新規な知見である。現在、論文投稿の準備を行なっている段階であるため、「概ね順調に進展している」、と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、病原菌抵抗性に寄与しているイネ由来のタンパク質(CBMIP)と病原性に寄与しているいもち病菌由来のタンパク質(ソーマチン結合タンパク質)の作用機構を明らかにしてきた。今後、これらの知見に関する学術論文を作成する。また、これらの知見を利用して、アポプラストにおいて作用している新たな病原菌抵抗性因子および病原性因子の単離・同定を試みる。
|
Causes of Carryover |
年度末からのコロナウイルスの影響により、学会の中止や研究の遅れなどにより計画していた予算の執行が不可能であったため、次年度使用額が0より大きくなった。
|