2018 Fiscal Year Research-status Report
分子認識反応における、R-Rasに特徴的なN末およびC末領域の役割
Project/Area Number |
18K06123
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梅木 伸久 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70647502)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞内情報伝達 / 低分子量タンパク質 / 1分子計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子量Gタンパク質 Ras は、細胞外からの刺激に応じて、いくつかの標的タンパク質を時空間的に適切に選択し下流へと情報を伝達する。しかしその経路選択のメカニズムは未だ定かでない。そこで本研究では、Raf kinaseの活性化反応におけるRasのC末領域の役割について明らかにする。そのためにH30年度は、細胞内におけるRasとRaf kinaseとの相互作用解析法の確立、およびFRET probeを用いたRafキナーゼの構造状態を検出する測定系の構築に努めた。具体的にはまず、Halo-tagが融合した恒常的活性型変異H-Ras(Ras-G12V)と、GFPが融合したRaf kinase (GFP-Raf)とをHeLa細胞内に共発現させた。また、H-RasのC末領域を、H-RasのホモログであるR-RasのC末領域と置換した恒常的活性型変異キメラH-Has(Ras-G12V-HR) も同様にGFP-Rafと細胞内で共発現させた。続いてHalo-tagをテトラメチルローダミンで蛍光染色し、TIRF顕微鏡観察により、生細胞内におけるRasとRafの2色同時観察に成功した。また細胞膜上におけるRas-G12V-HRのRafに対する親和性は、Ras-G12Vのそれに対する親和性とほぼ同程度であることがわかった。このことからRasのC末領域は、細胞膜上におけるRaf kinaseとの結合能に影響を与えないことが示唆された。一方、Raf kinaseの構造状態をモニターするFRET probeを用いた計測により、RasのC末領域は、細胞膜上においてRaf kinaseの閉じた構造から開いた構造への変換に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度中に細胞膜上におけるRasとRafキナーゼとの相互作用解析法の確立、およびRafキナーゼの構造状態を検出する測定系の構築が完了したことから「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
画像取得および取得した画像の解析処理の自動化を推進する。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の計画では、遺伝子操作用試薬類、培養用試薬類、一般試薬類、プラスチック製品類の予算が必要であった。また細胞内のRasとRaf kinase間相互作用を蛍光顕微鏡観察するために、蛍光試薬類および光学部品の予算が必要であった。しかし、研究室の他の予算で他の目的の為に購入したものを、本研究にも使用する事が出来たことから、結果的に余剰金 が発生した。 (使用計画)引き続き、蛍光試薬・光学部品などの高額な消耗品費に充当する。また1分子蛍光観察した画像を解析する為のソフトウエア・解析機器等を新たに購入し研究を加速させる。
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Research Products
(2 results)