2019 Fiscal Year Research-status Report
COPII小胞形成反応における膜の形態による制御機構の解析
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18K06126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
依光 朋宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00534364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小胞体 / COPII / 小胞輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、小胞体のチューブ構造の構築を担うRtn1とYop1の欠損変異 (rtn1/yop1)酵母ではCOPII小胞の形成必須因子Sec16の温度感受性変異体によるCOPII輸送の阻害効果を抑制することを明らかにした。この結果は小胞体からのCOPII輸送システムと小胞体の構造の機能的連携を示唆するものである。本年度は同様の手法を用いた実験から、Rtn1とYop1と共に小胞体ネットワーク構造の構築に関わるSey1、Lnp1もCOPII輸送に関与することを示唆する結果が得られた。特にSey1はダイナミン様GTPaseであるが、その変異体を用いた解析からSey1によるGTPの加水分解の制御が小胞体構造と輸送の機能的連携に関わる可能性が示唆された。加えてこの機能的連携に関わる分子メカニズムを明らかにするために、Sec16とCOPIIコートサブユニットの相互作用について検証を行った。我々の先行研究で確立した免疫沈降法では、生理的条件に近い発現量で全長Sec16とCOPIIコートSec23の相互作用の検出に成功していた。一方、別のCOPIIコートSec31との相互作用は検出できていなかった。そこで様々な条件検討を試みた結果、クロスリンカーを処理した細胞を用いることにより、生理的発現量でもSec16とSec23、Sec31の相互作用を同時に検出することに成功した。この方法を用いrtn1/yop1細胞におけるSec16とCOPIIコート間相互作用を調べると、野生型細胞と比較してSec23、Sec31の相互作用が変化していることを明らかにした。これらの結果は小胞体チューブ構造がCOPII因子間の機能的な相互作用の形成に寄与する可能性を明らかにした。以上の成果は、本件研究計画の目的である小胞体膜の構造によるCOPII輸送システムの制御機構を分子レベルで明らかにするための重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度明らかにしたCOPII小胞形成に関わる機能と小胞体の膜構造の連携について、本年度はGTPの加水分解を介した小胞体ネットワーク構造の構築の関与ならびにCOPII因子間の相互作用の制御といった分子メカニズムを明らかにすることができた。そのためおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に基づき、精製タンパク質を用いたin vitro再構成実験を行う。必要最小限の因子を用いた単純な実験系によりSec16と小胞体膜構の機能的連携にはどのような分子メカニズムが伴うのかを詳細に検証する。
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Causes of Carryover |
Sec16とCOPIIコートSec23、Sec31の相互作用を調べるための免疫沈降実験の条件検討に時間をかけたため精製タンパク質を用いたin vitro再構成実験を本年度は行わなかった。このため、タンパク質精製を含む再構成実験の実施に必要なアフィニティレジン、界面活性剤、人工脂質等の試薬や消耗品を購入しなかったので次年度使用額が生じた。次年度使用額はこれらの未実施の実験ならびに本年度からの継続実験に必要な試薬や消耗品の購入、及び学会、論文発表等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)