2020 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖が生み出すペリニューロナルネットの多様性と神経可塑性における機能の解明
Project/Area Number |
18K06130
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮田 真路 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60533792)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | プロテオグリカン / ヒアルロナン / ペリニューロナルネット / 細胞外マトリクス |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の細胞外マトリクスは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) やヒアルロナンといった糖鎖に富む特徴を示す。特定の神経細胞周囲にはペリ ニューロナルネット (PNN) と呼ばれる特徴的な細胞外マトリクス構造が形成される。加齢に伴うPNNの変化を調べた例もあるが、老化により増加または減少するといった対立した結果が報告されている。この原因として、多くの研究では組織染色法によってPNNを検出しており、使用するプローブの特異性により結果が異なる可能性がある。そこで本研究では、PNNを構成する分子群の生化学的性質を詳細に解析した。 過去の研究では、成体脳においてPNNを構成する分子は不溶性画分に濃縮されることが報告されている。 そこで、成体(3ヶ月齢)および老齢(18ヶ月齢)マウスの脳に存在するPNN構成分子群を溶解度の違いに基づき、水溶性、界面活性剤可溶性、不溶性の3画分に分画し、CSPGとヒアルロナンの解析を行った。その結果、ヒアルロン酸は脳の老化に伴って不溶性画分に存在する割合が有意に減少し、水溶性および界面活性剤可溶性画分に存在する割合が増加することが示された。ヒアルロン酸の溶解度の増加に伴い、その分子量は低下していた。また、ヒアルロン酸と同様に、コンドロイチン硫酸も老化に伴い溶解度が上昇することが示された。そこで次に、複数のCSPGの中で老化に伴う溶解度の変化を示す分子を探索した。その結果、特にアグリカンが老化に伴い不溶性画分から可溶性画分に顕著に移行することが示された。さらに、老齢脳からはタンパク質全長のアグリカンに加えてコアタンパク質の分解断片が検出され、この分解断片は水溶性画分に存在していた。以上の結果より、老齢脳ではPNNの凝集性が低下することで、シナプス安定化におけるPNNの機能が損なわれる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老齢マウス脳において、アグリカンとヒアルロナンの分解が亢進することを見出し、加齢に伴うぺリニューロナルネッ トの劣化の機構の一端を明らかにした。また、その成果を論文として公表することがきたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
脳の加齢に伴いヒアルロナンの分子量が低下することが示された。今後は生体サンプル中のヒアルロナンの分子量を簡便に解析する手法を確立する。その手法を用いて、水溶性、界面活性剤可溶性、不溶性の3画分に存在するヒアルロナンの分子量を調べ、加齢に伴いそれらがどのように変化するのか解析する。
|
Causes of Carryover |
計画当初に設備備品費として遺伝子導入装置を計上していたが、この装置は汎用性が高く本科研費とは別の研究費を充てることができたため、次年度使用額が生じた。一方で、遺伝子導入実験には当初の計画よりも高額の試薬、消耗品、電極が必要であったため、次年度使用額はこれらの購入に充てることとする。そのため、研究全体としては当初の計画通りの実験内容を実施する予定である。
|