2019 Fiscal Year Research-status Report
新たなC型糖修飾責任酵素の同定と基質タンパク質の解析
Project/Area Number |
18K06137
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清水 史郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30312268)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C型糖修飾 / MFAP4 / フィブリノーゲンC末端領域 / 細胞外分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
C-mannosylation(以降、C型糖修飾)の新規酵素の同定を試みる本研究では、そのために新規な基質タンパク質の同定が重要である。これまでにC型糖修飾を受けるタンパク質の多くは、その配列中にthrombospondin type 1 repeat(TSR)を有しているか、タンパク質自身がタイプIのサイトカイン受容体であった。そこで、本年度はC型糖修飾を受ける新たなタンパク質内領域の同定を試みた。 我々が構築したデータベースを使用し、数百の分泌タンパク質の中から着目したのはFibrinigen C-terminal domain(FCD)である。FCDはその中にC型糖修飾を受けるために必要なコンセンサス配列を有し、またFCDを含むタンパク質は多数あることから解析の対象とした。なお、FCDを含むタンパク質としてはMicrofibril-associated glycoprotein 4(MFAP4)、Fibrinogen-like protein 1(FGL1)そしてangiopoietin-like 4(ANGPTL4)を選定し解析した。 その結果、FGL1およびANGPTL4ではC型糖修飾されていなかったが、MFAP4ではトリプトファンの235がC型糖修飾されており、FCDを持つタンパク質がC型糖修飾されることを世界で初めて発見した。トリプトファン235をフェニルアラニンに置換しC型糖修飾されなくしたMFAP4との比較実験により、MFAP4におけるC型糖修飾は小胞体からゴルジ体への移行に重要であり、結果的に細胞外分泌にも必要であることが示された。 さらにMFAP4におけるC型糖修飾は、C型糖修飾されていないMFAP4の分泌を促すことで細胞外のMFAP4量を調整している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにC型糖修飾が発見されてから25年以上経つが、報告されている基質タンパク質は約30程度であり、同定できたタンパク質領域は上で触れたTSR領域を含むものとタイプIサイトカイン受容体だけであった。現在でも他グループから新規基質タンパク質の報告があるものの、その多くはどちらかに属するものである。 今年度の我々研究グループのチャレンジにより、新たにFCD領域がC型糖修飾されることが示された。しかしながら、FCDを持つタンパク質でもすべてのタンパク質でC型糖修飾されていたわけでなく、試した中ではMFAP4だけであり、FGL1やANGPTL4ではC型糖修飾されていなかった。残念に思われる結果ではあるが、我々はむしろFCD領域の中でもC型糖修飾されやすい配列とそうではない配列がある可能性を考えており、今後の責任酵素同定のためにも大いに役に立つ情報を提供できたものと思われる。 本年度で新規の責任酵素を同定できたわけではないが、新しい基質タンパク質の同定をできたため、「おおむね順調に進展している」と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はMFAP4以外でFCDを有するタンパク質でもC型糖修飾される例があるか否か探索するとともに、FCD以外の新たなC型糖修飾される領域を発見するために研究を行う。具体的には、我々が構築したデータベースを基に候補タンパク質を絞り込み、当該遺伝子のクローニング、目的細胞への遺伝子導入、安定過剰発現細胞の樹立、リコンビナントタンパク質の精製、質量分析法によるC型糖修飾の評価をする。以上のことより、FCDにおけるC型糖修飾の更なる知見と新たなC型糖修飾される領域の発見につながることができる。 一方で、新規C型糖修飾責任酵素の同定も並行して進める。 以上のことより、これまでに不明な点が多かったC型糖修飾に関する知見を広げることができるものと思われる。
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