2018 Fiscal Year Research-status Report
膜タンパク質膜挿入における糖脂質MPIaseのシャペロン様・酵素様活性機構の解明
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18K06143
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
三浦 薫 (野村薫) 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 主席研究員 (90353515)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膜挿入因子 / MPIase / 膜挿入抑制因子 / DAG / 固体NMR / PISEMA法 / 膜配向角度 |
Outline of Annual Research Achievements |
基質タンパク質Pf3の膜挿入状態の決定 タンパク質の膜挿入因子である糖脂質のMPIaseや膜挿入抑制因子であるジアシルグリセロール(DAG)が基質タンパク質の膜挿入に与える影響を観測するため、固体NMRの手法の一つであるPISEMA法を用いて、基質タンパク質のモデルであるPf3の膜への挿入角度の解析を試みた。そのために、まずPf3のhelix2を含む部分構造を部位特異的に15N安定同位体標識したペプチドを固相合成法により合成した。これをバイセルに挿入した試料を調製し、このペプチドの膜挿入状態をPISEMAスペクトルにより解析した。その結果、スペクトルはペプチドのへリックス部分と脂質膜のなす角度に依存したPISEMAスペクトル特有のホイール状の特長的な相関ピークのパターンを示した。実験スペクトルをシミュレーション結果によりフィッティングした結果、Pf3部分構造は膜に対して約70度の角度で挿入していることがわかった。次に、抑制因子であるDAG存在下でPf3部分構造の膜挿入角度を解析したところ、DAG存在下では挿入が大幅に阻害され、Pf3部分構造の一部のみが膜表面近くに挿入していることがわかった。さらに、活性に影響を与える膜中の電荷がPf3部分構造の膜挿入状態に与える影響を検討したところ、Pf3部分構造の膜への配向角度は膜を構成する脂質に依存しないものの、DAGによる蛋白質膜挿入抑制は負電荷をもつDMPGの存在により増強されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
始めは、尿素にPf3部分構造を溶かして膜外から膜挿入することに成功していたが、この膜挿入方法を再現しようとしても再現できなくなってしまったため、バイセルの構成膜脂質であるDHPCでペプチドを包んで膜挿入する方法に切り替えることにした。この点以外は問題なく研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
MPIase, 基質タンパク質、膜の間に働く以下の各種相互作用について解析する。
MPIase-基質タンパク質 Pf3の膜への挿入、結合状態を決定するために、これまでにPISEMAスペクトルを用いてPf3の部分構造で行ってきた解析を全長Pf3に対して行い、膜への配向角度を決定する。さらにMPIase、DAG存在下における配向角度の変化を解析する。 MPIase-膜 DAGやMPIaseが脂質膜の運動性に与える影響を解析する。既に膜脂質頭部やMPIase自身の運動性、膜の形態変化、 脂質のアシル鎖の配向度合い、膜脂質のパッキング、DAGのflip-flop速度等を解析し、MPIaseが膜脂質の様々な運動性のパラメーターに影響を与えていることを明らかにしているが、さらに合成類縁体を用いた解析を行い、MPIaseの官能基が脂質の運動性に与える影響が活性とどう関係するかを突き止める。 MPIase-MPIase 一般に糖鎖の相互作用は弱いために、糖鎖が集まってクラスターを形成していることが知られている。MPIaseの糖鎖を蛍光標識しておき、平面膜の顕微鏡観測を行うことで、会合状態を検証する。
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