2018 Fiscal Year Research-status Report
ヘパラン硫酸脱硫酸化酵素Sulfによるシナプス可塑性調節機構の解析
Project/Area Number |
18K06145
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (30529524)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘパラン硫酸 / プロテオグリカン / シナプス可塑性 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン (HSPG) は直鎖状の糖鎖であるヘパラン硫酸 (HS) を有する糖タンパク質であり、HS鎖を介して様々な分子と相互作用することで多くの生理現象を調節する。HSPGがこの様な多彩な機能を示す一つの要因は、HSが生合成時に多種類のHS修飾酵素によって修飾を受けるため、極めて多様な微細糖鎖構造を持つためだと考えられている。一方、近年ヒトにおいてHSPGの異常が知的障害や精神疾患の原因になることが報告されているが、その作用機序については全く分かっていない。本研究ではモデル生物であるショウジョウバエを用い、これまで明らかにされてこなかったシナプス可塑性におけるHSPG及びそのHS微細糖鎖構造の役割を調べる。特に、細胞外で唯一機能するHS修飾酵素であるSulfに注目し、「Sulfは、環境や神経活動によって局在や発現レベルが変化し、ヘパラン硫酸の糖鎖構造を変化させることで、シナプス可塑性を調節する。」という作業仮説を検証する。これまでの研究から、幼虫を飢餓状態に置くと、体内のオクトパミン (脊椎動物のノルアドレナリンに相当) レベルが上昇し、神経筋接合部におけるグルタミン酸作動性のシナプス終末の数と幼虫の移動速度が増加することが知られている。このような飢餓時に起こる変化においてHSPGがどの様な役割を果たすのかを調べた。その結果、 シナプスにおけるHSPGコアタンパク質のレベルがオクトパミンシグナルによって調節されること、またHSPG及びSulfが飢餓時に起こるシナプス終末の数と幼虫の移動速度の増加に必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
飢餓時に観察されるシナプス終末の形成と行動の変化においてHSPGコアタンパク質とSulfが必要であることから、HSPGとその微細構造が重要な働きをすることが判明した。またSulf抗体を複数作成し、シナプスにおける局在観察が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
Sulfの局在が飢餓やオクトパミンシグナルにより調節される可能性を調べるため、飢餓状態やオクトパミンの欠失がSulfの局在にどの様な影響を与えるのかを調べる。さらにSulfによるHSの構造変化を市販の抗HS抗体を用いて解析する。これにより飢餓時にHSの微細構造が変化する可能性を調べる。
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Causes of Carryover |
平成30年度は遺伝学実験と形態観察が中心であり、消耗品等を多く購入しなかった。 平成31年度は飢餓時におけるSulfの局在変化を調べるため、Sulf-GFPトランスジェニックハエの作製、免疫組織化学染色法に用いる抗体等の購入、ハエの輸送費、及び謝金に使用する予定である。
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