2020 Fiscal Year Research-status Report
ヘパラン硫酸脱硫酸化酵素Sulfによるシナプス可塑性調節機構の解析
Project/Area Number |
18K06145
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (30529524)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | へパラン硫酸 / プロテオグリカン / シナプス可塑性 / 自閉症 / へパラン硫酸修飾酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン (HSPG) は コアタンパク質にヘパラン硫酸 (HS) 鎖が共有結合した糖タンパク質であり、HS 鎖を介して分泌性タンパク質やウイルスのコートタンパク質などの様々な分子と相互作用することが知られている。HSPGがこの様な多彩な機能を示す一つの要因は、HSが多種類のHS修飾酵素によって調節を受けるため、極めて多様な糖鎖微細構造を持つためだと考えられている。一方、ヒトにおいて グリピカンなどのHSPG の異常は自閉症などの精神疾患を引き起こすことが報告されているが、その発症機序については不明である。そこで本研究ではモデル生物であるショウジョウバエを用い、シナプス可塑性における HS微細構造の役割を調べている。細胞外で機能する HS 修飾酵素Sulf の機能に注目し、「Sulfは、環境や神経活動によって局在や発現レベルが変化し、ヘパラン硫酸の構造を変化させることでシナプスの可塑的変化を調節する。」という可能性について検討する。これまでの研究から、幼虫を飢餓状態に置くと、体内のオクトパミン (脊椎動物のノルアトドレナリンに相当) レベルが上昇し、神経筋接合部におけるシナプス終末の数が増加することが知られている。昨年度までの解析からSulfはシナプス前細胞で機能し、飢餓時に起こるシナプス終末の増加に必要であることが分かっている。さらに解析を進めたところ、Sulfはシナプス後部におけるグリピカンを介してシナプスの可塑的変化を調節することが判明した。この結果はSulfがシナプス前細胞からシナプス後部に分泌することで機能することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sulfが修飾するHSPGコアタンパク質を同定し、Sulfがシナプス前部から後部に分泌して機能することが推測された。一方、Sulf-FLAGノックインハエを用いてSulfの局在を調べたがシグナルの強さが十分でなく条件検討が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
Sulfがグリピカン以外のHSPGの機能を調節する可能性について調べる。また環境変化及び神経活動によってSulfの局在が変化する可能性について調べる。
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Causes of Carryover |
2020年度までにSulfの局在解析を終了できなかったため。2021年度はSulfの局在解析を行うための試薬及びショウジョウバエの飼育に使用する予定である。
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