2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞内輸送方向を左右する細胞質ダイニン構造状態のライブイメージング
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18K06147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島 知弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60631786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光共鳴エネルギー移動 / モータータンパク質 / 微小管 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物内での多くの生命機能にとって、細胞内で物質が正しい方向へ輸送されることは非常に重要である。そのためには、微小管上においてそれぞれ逆方向へ の輸送を担うキネシンと細胞質ダイニンの運動が適切に調節される必要がある。特に、小胞や目的地ごとに多種多様なキネシンが存在するのに対し、細胞質ダイニンは1種類で細胞質におけるほぼすべての小胞輸送に対応するため、細胞質ダイニンの活性調節が輸送方向決定の鍵を握ると考えられている。この調節の分子機構として、おもに構造学的な知見からダイニンの2つの重鎖が重なることによる自己阻害モデルが提唱された。しかし、細胞内において実際に自己阻害モデルの構造状 態をとるのか、それが運動活性といかに連関するかという点については、明らかになっていない。 本研究はこの問題を検証するため、ダイニン1分子中に存在する2つの重鎖それぞれを蛍光標識し、その蛍光物質間の共鳴エネルギー移動を利用して、運動中および休止中のダイニン分子の構造状態を精査するものである。平成30年度の研究によって、3種類の位置に蛍光標識したダイニン遺伝子組換え体の構築および発現に成功し、そのすべてが運動活性を保っており、野生型と同じく多様な運動状態を示すことを確認した。そこで、当該年度は各組換えダイニンの蛍光共鳴エネルギー移動計測を進め、ヌクレオチド状態に応じて構造が変化すること、および中間状態の存在を示唆する結果を得た。今後は、捉えた蛍光共鳴エネルギー移動のシグナルと構造状態の連関を確認したうえで、各運動状態におけるダイニンの構造状態を調査していく予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、最終的に細胞内での輸送状況とダイニンの構造状態との連関を検証することを目的としている。そのためには、まずダイニンの構造状態に応じて蛍光 共鳴エネルギー移動効率が大きく変化する位置に蛍光物質を付与する必要がある。 研究初年度にあたる平成30年度の研究によって、当初に計画した3か所の蛍光標識位置の候補すべてにおいて、ダイニン遺伝子組換え体の構築・発現・精製に成 功し、予定していた蛍光標識ダイニン分子が得られた。さらに、実際の顕微鏡観察によって、得られた3種の蛍光標識ダイニンのすべてが微小管上を運動する活 性を保持していることも確認できた。したがって、3種類の蛍光標識ダイニンを今後の研究に使用することができる状況が整い、蛍光標識による影響などを検証 するうえで非常に有用であると期待できる。さらに、令和元年度には得られた蛍光標識ダイニンの1分子イメージングによって、蛍光共鳴エネルギー移動効率が経時変化している様子の詳細な解析を進め、ヌクレオチド状態による変化・中間状態の存在を示唆する結果を得ることができた。しかし、この解析に当初予定していたよりも時間がかかり、構造状態と蛍光共鳴エネルギー移動効率との連関の検証に至らなかった。 今後、上記の検証を進めることが必要ではあるが、これまでに得られた蛍光標識ダイニンとその1分子蛍光計測のデータそのものは、ダイニンの構造状態の経時的な変遷を理解するうえで重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、これまでの研究で得られた蛍光標識ダイニンの、蛍光共鳴エネルギー移動効率とダイニン構造状態との関係性について、自己疎外モデルで想定されている2つの重鎖が重なる構造状態を取れなくなる変異体を用いた実験、およびクライオ電子顕微鏡観察など、多方面から検証していく。この検証を通じて、各蛍光共鳴エネルギー移動効率と対応したダイニンの構造状態を確定していく予定である。以上の検証が完了しだい、細胞質ダイニンの2つの重鎖の向きが、運動活性や細胞内輸送方向へ与える影響を調べるために、微小管上を運動または静止する分子について1分子蛍光計測を進める。さらに、細胞内の内在性ダイニン重鎖の、当該位置に蛍光タンパク質をノックインし、細胞内での運動状況との連関についても検証したい。CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを用いて、遺伝子操作することを予定しており、すでに良好な予備データを得ている。ノックインされた蛍光タンパク質の蛍光共鳴エネルギー移動効率を、生細胞イメージングにより計測することで、細胞内輸送時のダイニンの運動活性と構造状態 の同時計測を実現し、輸送方向にも大きく影響する細胞質ダイニンの運動制御機構を明らかにしていく予定である
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Causes of Carryover |
本年度に構造状態との連関解析を行う予定であったが、1分子蛍光計測系の安定性に問題が生じたため予定を変更し、系の安定化をはかった関係で未使用額が生じた。この解析について次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充当したい。
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Research Products
(12 results)