2018 Fiscal Year Research-status Report
逆ミセル封入法によるアミロイドβ可溶性オリゴマーのNMR解析
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18K06151
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星野 大 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70304053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アミロイド線維 / NMR / 逆ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
およそ 40 残基からなるアミロイドβ(Aβ)ペプチドが脳内に蓄積するアルツハイマー病の原因解明は社会的にも重要な課題である。最近の研究によりAβ数分子からなる「可溶性オリゴマー」が発症に重要な役割を果たすと考えられているが、その構造ならびに生成の分子機構は不明である。 本研究では「可溶性オリゴマー」のモデルとして、Aβ二分子をジスルフィド結合により架橋したダイマー分子を作製し、その水溶液中での構造を高分解能溶液NMRにより明らかにする。そのために、Aβペプチドの二番目のアラニン残基をシステインに置換した変異型Aβ(A2C)を作製した。分子間ジスルフィド結合により二分子を架橋したA2Cダイマーは、野生型やA2Cモノマーよりも凝集性が高く、速やかにβシートに富んだ構造へと凝集した。 はじめに、野生型Aβペプチドを用いて、水溶液中および逆ミセル中での構造をNMRスペクトルにより比較した。その結果、どちらもランダムコイル様の構造をもつことが明らかになった。このことは、逆ミセルへの封入がAβの構造に与える影響は非常に低い事を意味する。次に、低温・低濃度により凝集反応速度を低下させた状態でA2Cダイマーを逆ミセル内に封入し、同様にNMRスペクトルを測定した。その結果、野生型Aβと同様に、逆ミセル内でランダムコイル様のスペクトル示すことが明らかとなった。この事は、A2Cダイマーの高い凝集性が「二量体化することによりアミロイド線維と同様のβシートにとんだ構造を形成しやすくなる」ことによるものではない事を示唆する。更に、アミロイドの凝集核として作用するためには、二分子よりも多くのAβ分子が必要である事を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、野生型およびA2C変異型Aβペプチドの作製、逆ミセルへの封入、高分解能NMR解析まで順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、A2Cダイマーは極めて凝集性が高く、ラグタイムなしに速やかに重合する事が知られている。しかしながら、形成される凝集体は野生型のものよりも短く、典型的なアミロイド線維とは形態が異なっていた。一方、本研究により、逆ミセル中に封印された状態では野生型と同様のランダムコイル様構造を取ることが示された。これらの結果から、二量体化すること自体により分子全体の疎水性が増加し、会合・解離のバランスが会合側へと大きく傾くことにより形成される線維の形態が変化するという作業仮説を立てている。この仮説に基づき、ペプチドの初期濃度や温度を変化させて会合・解離の速度を人為的に変化させた時に、どのような凝集体が形成されるかを観察する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも消耗品費が必要だったため、50 万円分の前倒し請求を行なった。その前倒し請求見積額が多すぎたため、10 万円ほどの残額が生じた。今年度に引き続き、NMR測定に必要な安定同位体を初めとする研究材料費用として使用する。
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Research Products
(6 results)