2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the directional switching mechanism of the bacterial flagellar motor
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18K06155
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮田 知子 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教(常勤) (30423156)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細菌べん毛 / べん毛モーター / スイッチ複合体 / 回転方向制御機構 / 電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌は運動器官としてべん毛を持ち、べん毛の根元にあるモーターを反時計回り(CCW)または時計回り(CW)に回すことで細菌を好ましい環境へ移動させる。この可逆的に回転方向の切り替えられるモーターの回転方向の変換はべん毛モーター(基部体)の細胞質側に存在すCリング(スイッチ複合体)で行われる。申請者はべん毛の回転方向切り替え時の分子レベルでの詳細な回転制御機構の明らかにするために、野生型(ほぼCCW型回転を示す)とスイッチタンパク質FliGの三残基欠失変異体(CW型回転を示す)の基部体のクライオ電子顕微鏡法による構造解析を行なった。これまでのCリングの構造解析ではCCW型のCリングの構造でようやくスイッチタンパク質の一部の結晶構造を当てはめるのが可能な構造が得られて来たが、CW型ではデータ量が圧倒的に足りなかったためにCCW型に比べて明らかに低分解能の構造しか得られていなかった。このためH30年度はCW型のCリングのデータ収集に集中し、CCWとほぼ同程度のデータ収集が完了した。さらにCCW、CW両者のデータで解析方法を再度検討した結果、両者のCリングの構造は結晶構造の当てはめが可能となるおおよそ7オングストローム程度まで改善できた。 Cリングを構成するスイッチタンパク質はこれまでにドメイン構造ならびに全長構造、一部複合体での結晶構造解析まで多くの構造解析がなされている。そこで今回我々が解いたCリングの構造にこれらスイッチタンパク質の結晶構造を当てはめ二状態のCリング構造の擬似原子モデルの構築を行なっている。どちらの構造もCリングの細胞質側の領域の構造は分解能が高く、スイッチタンパク質FliM、FliNのドメイン構造を非常によく当てはめることが出来た。得られた擬似モデルとこれまでに得られている生化学的、遺伝学的情報を照らし合わせながら現在二状態のCリングの構造を構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのCリングの構造解析では、CCW型では約20万粒子からの構造解析で最終約4万の粒子像から一部原子構造の当てはめが可能な構造が得られました。しかしCW型のCリングの構造解析ではデータ量が足りなかったためにCCW型に比べて明らかに低分解能の構造しか得られていなかった。このため昨年度はCW型のCリングのデータ収集に集中し、さらにCCW型でも追加でデータの収集を行なった。Cリングの粒子像の抽出は自動での抽出が難しく、正しい画像位置を認識できないため)これまでは手動で抽出を行なって来たが、新たに開発された人工知能と自動学習を応用した粒子抽出プログラムを使用し、自動で粒子抽出を行った。これにより粒子像の抽出が短時間で正確に行われ、取り残しを最低限に抑え、両者の初期データは約40万粒子にまで増加できた。さらに新たに開発された単粒子解析のオプション等を解析に組み込むことで分解能の高い構造を得られると期待して、解析方法を再度検討し直した。この結果両者のCリングの構造は最終的に約10万粒子像から結晶構造の当てはめが可能となる約7オングストローム程度まで改善できた。とりわけ両者の構造の中でもCリングの外筒の中間から下部領域(細胞質側)の構造はスイッチ蛋白質FliM、FliNのドメイン構造を問題なく当てはめることができた。しかし、Cリングの細胞膜に近い側の構造(内側のローブと外筒の上部分)は外筒中間から下部構造に比べると構造的に不安定なようで確実に当てはめが行えるほどの分解能の構造には到達していない。このため残るスイッチタンパク質FliGに関してはMドメインの構造は大まかな配置を決めることができたが、特にN末端とC末端のドメインの配向に一部曖昧さを残している状態である。しかし二方向の回転状態のCリングの大まかな原子モデルは構築が可能となり、両者の構造の違いをはっきりと捉えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は二状態のCリングのデータのさらなる収集を続け、構造解析を再検討した結果、どちらの構造も一部の領域を除きスイッチタンパク質の原子構造を当てはめることが可能になり、両者の擬似原子モデルの構築ならびに比較をすることが可能になった。しかしそれでも現時点の構造は領域ごとに分解能の違いが大きく、とりわけスイッチタンパク質FliGの構造を当てはめるには不十分であった。このため、今後はさらなる分解能の向上を目指して、さらなるデータ収集を行う。また分解能の悪い領域に注目したクラス分けなどの解析手法の利用を検討し、分解能の向上に努め、Cリング中でのFliG分子の正確な配向を決定したい。スイッチタンパク質FliMのMドメインとC末端ドメインとFliNのC末端ドメインは既存の構造もあり、また現在の電顕構造でも当てはめが完了している。しかしFliM、FliNのN末端領域の構造は他の手法でも解かれておらず、また我々の電顕構造中でもその領域に相当する密度が確認できていない。今後はこれらの領域の構造が確認できるような構造解析を引き続き進めるために、これらの領域のホモロジーモデリングなどを行い、構造決定を進めていきたい。またFliMのN末端ドメインは反転シグナルであるリン酸化CheYとの結合により構造を取る可能性が示唆されており、現在の2つの状態のCリングの構造解析では可視化が難しいと思われる。そこで今後はリン酸化型CheY結合Cリングの構造解析を同時に進めていく方針である。ただし、CheYは分子量が小さく、氷包埋像の中での検出が難しいと考え、リン酸化型CheYの擬似変異体のC末端側に蛍光タンパク質YFPを融合した分子を用い、Cリングとの複合体を再構成し、構造解析を行う。これらの構造情報を合わせ、べん毛の回転変換機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
H30年度にデータ解析用PCの購入を予定していたが、新しいGPUの発売が遅れ該当年度の購入が困難であった。
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Research Products
(12 results)