2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06159
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
森本 雄祐 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (50631777)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 膜電位 / 蛍光イメージング / 走化性 / 光遺伝学 / イオン選択性 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、細胞性粘菌の走化性シグナル伝達機構をモデルとして、分子生物学的手法と光遺伝学および生物物理学的手法により、真核生物の走化性シグナル伝達における膜電位の役割を明らかにする。また、これまでにシグナル伝達に伴った膜電位変化において複数のイオン流が関わっていることがわかっており、イオンそれぞれの選択的な働きを解明することを目的としている。 昨年度までの研究において、細胞性粘菌の発生ステージの遷移に伴って、細胞性粘菌の主要なシグナルの1つであるcAMPのシグナル伝達機構への寄与度が大きく変化することを明らかにしている。これに対し、本年度は、発生ステージに関わらず働いているシグナルの探索を行った。その結果、高感度なカルシウムイメージング手法を導入することにより、細胞性粘菌の単細胞期から多細胞期に至るまで、機械刺激応答のシグナル伝達にカルシウムイオンが大きく働いていることを明らかにした。さらに、分子遺伝学的アプローチにより、機械刺激に関わるカルシウムシグナル経路を特定した。ここで働く経路の大部分は、ヒト細胞を含む哺乳類細胞でも保存されている分子機構であり、メカノセンシング研究に大きく貢献する知見を得ることができた。また、細胞質pHの高感度イメージング技術の開発により、細胞性粘菌の分化および脱分化における細胞内pH変化を検出することに成功した。これは脱分化過程をpHを指標として可視化した世界で初めての研究成果である。本研究で確立したイメージング技術は、細胞性粘菌の研究だけでなく、原核生物から真核生物に至るまでの幅広い研究に応用できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞性粘菌の多細胞体期において、機器刺激応答にカルシウムイオンが働いていることを初めて明らかにした。さらに、カルシウムシグナルの伝達経路についても概要を明らかにした。この結果は、広く真核細胞の機械刺激受容シグナル伝達機構の解明に寄与する結果である。 また、細胞質pHを高感度に可視化し、これを指標とすることで、細胞性粘菌の分化および脱分化過程をモニターすることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞性粘菌の発生過程に伴うイオン流それぞれの役割が明らかとなってきた。これらを明らかにするための主要な技術としている高感度なイメージングと光操作手法を駆使し、細胞のダイナミクスを同時に計測することにより、シグナル伝達における各イオンの共同的または独立的なシグナル伝達メカニズムを明らかにする。また、シグナル伝達に関与する遺伝子を欠損した変異体を用いた計測など、分子遺伝学的手法を組み合わせることにより、シグナル伝達の分子メカニズムの詳細を解明することを目指す。
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Research Products
(13 results)