2018 Fiscal Year Research-status Report
親和性成熟に伴う抗体の抗原認識機構変化と動的構造変化の解明
Project/Area Number |
18K06161
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
織田 昌幸 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20318231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗体 / 抗原結合 / 結晶構造 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ニトロフェニル(NP)抗体の親和性成熟型の1つC6について、その一本鎖Fv(scFv)抗体とNPとの複合体の結晶化に成功し、高分解能で立体構造を決定した。既報の親和性成熟前の抗体N1G9の結晶構造と比較し、抗原結合親和性向上の要因を解明した。特に成熟の鍵となる抗体重鎖95番のアミノ酸残基の役割について、主に同残基に続くループ構造に与える影響から、初めてその構造基盤を明らかにした。なお本成果は、近日中にも論文投稿する予定である。また着目する重鎖95番をC6と同じくGlyとして、他のアミノ酸配列を系統的に変えて親和性成熟の分子機構を解明すべく、9TG、9T7、9T13(この順で親和性成熟が進行)という一連の抗NP scFv抗体、さらにC6から成熟が進んだE11 scFv抗体を創製した。E11 scFv抗体については、蛋白質発現後のリフォールディングに問題があり、十分な構造形成に至っていない。一方、9TG scFv抗体については、適切な構造形成を確認し、等温滴定熱量計を用いた抗原結合解析や示差走査熱量計を用いた熱安定性解析などを行った。その結果、抗原結合定数はC6 scFv抗体よりも1桁以上小さく、予想される結果となった。一方、熱安定性は、抗原結合前、結合後ともに、N1G9 scFv抗体と同様に高く、N1G9とC6で示した先行研究の結果を支持した。9T7や9T13の各scFv抗体の試料調製も進め、親和性成熟という尺度で、抗原結合活性と安定性のトレードオフが認められるかの検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親和性成熟過程にある各種scFv抗体の発現、精製にあたって、E11 scFv抗体の調製に問題が生じているが、9TG scFv抗体の調製に成功し、抗原結合能や熱安定性の解析を行い、一定の成果を挙げることができた。またC6 scFv抗体を用いて抗原との複合体の結晶化に成功し、高分解能の立体構造情報を得たことは、当初の計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、系統的な親和性成熟過程にある9TG、9T7、9T13の各scFv抗体を調製し、個々の抗原結合能と熱安定性を解析し、N1G9とC6の結果に基づき論文報告した結合と安定性のトレードオフの一般性を検証する。さらに各scFv抗体の結晶化も行い、結合と安定性の構造基盤を解明する。またNMRやX線1分子回折実験(DXT)による動的構造解析も進め、アンサンブル量と1分子解析結果を相関付け、各scFv抗体の抗原結合能や安定性における動的構造の寄与を評価する。
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