2019 Fiscal Year Research-status Report
親和性成熟に伴う抗体の抗原認識機構変化と動的構造変化の解明
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18K06161
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
織田 昌幸 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20318231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗体 / 抗原結合 / 結晶構造 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ニトロフェニル(NP)抗体の親和性成熟型の1つ、C6の一本鎖Fv(scFv)抗体と、抗原NPとの複合体の結晶構造解析に成功し、英文国際誌Mol. Immunol.に論文発表した。C6よりさらに成熟の進んだ抗体E11のscFvと、アミノ酸置換が系統的なシリーズとして、9TG、9T7、9T13(この順で成熟が進行)の各scFvについて、大腸菌発現系を作製した。E11、9TG、9T7について、各精製scFvのNP結合を等温滴定熱量計で解析した結果、E11 scFvと9T7 scFvでは元の全長モノクローナル抗体で得られた結合力を再現した。さらにscFv作製のメリットとして、モノクローナル抗体では得られておらず、9T7の成熟前として新たに調製した9TG scFvでは、予想通り、germline型抗体と同程度の結合力が得られた。また円二色性分散計および示差走査熱量計を用いて、抗原存在下、および非存在下での熱安定性解析を行った。その結果、抗原非存在下での変性中点温度(Tm)は、9TG > 9T7 > E11となり、抗原結合に伴い、Tmは同程度に上昇することが示された。これらの結果は、既にC6とgermline型抗体のN1G7を用いた安定性解析で論文発表した結果と一致し、免疫初期に産生される抗体は抗原非結合状態でも安定に存在し、免疫後期に産生される抗体は、抗原結合力は上昇するものの、安定性は低下するという結果を支持した。その他、関連研究として、卵白リゾチーム(HEL)に対して親和性成熟した抗体HyC1のscFv調製に成功し、HELの動的挙動を認識するHyC1の特徴的な抗原認識機構を再現した。これらの成果は、英文国際誌Biosci. Biotechnol. Biochem.に論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親和性成熟過程にある各種scFv抗体の発現、精製にあたって、9T13 scFv抗体の調製に難航しているが、予定した他のscFv抗体の調製に成功し、抗原結合能や熱安定性の解析を行い、一定の成果を挙げることができた。複数の学会発表に加えて、原著論文2報を発表出来たので、おおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、9T13 scFv抗体も含めて個々の抗原結合能と熱安定性を解析し、N1G9とC6の結果に基づき論文報告した、抗体の抗原結合と安定性のトレードオフの一般性を検証し、親和性成熟との相関を解明する。さらに特定残基の影響を、各変異体を作製することで解明する。またNMRやX線1分子回折実験(DXT)による動的構造解析も進め、アンサンブル量と1分子解析結果を相関付け、各scFv抗体の抗原結合能や安定性における動的構造の寄与を評価する。
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Research Products
(6 results)