2020 Fiscal Year Research-status Report
CMS画分を用いたATF7による精子エピゲノムの分子的制御機構の解明
Project/Area Number |
18K06189
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 圭介 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (80587452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成熟精子 / エピゲノム / miRNA / tsRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、環境ストレスが成熟精子のエピゲノム状態に与える影響を調べるため、マウスの宇宙環境飼育の影響について調べた。宇宙空間で5週間飼育したマウスから精巣生殖細胞を回収し、転写因子ATF7(ストレス依存的に結合変化することで、ヘテロクロマチン形成を制御する)の結合状態をChIP-Seq法で調べると、地上飼育のコントロール群と比較して、3,189 TSSにおいて結合の減少が検出された。このことは、マウスの宇宙打ち上げ・飼育に伴うストレスによって、精巣内のATF7が活性化されたことを示しており、一部の遺伝子プロモーター領域のヘテロクロマチン形成が解消された可能性が示唆された。実際に、これら領域におついて、宇宙飼育マウスの成熟精子HRCSのエピゲノム状態を調べると、H3K9me2レベルの減少が観察された。同様に、成熟精子HRCSの転写プロファイルをsmall RNA-Seq法で調べると、宇宙飼育で発現が減少する12 small RNAが検出された。これらsmall RNAの標的遺伝子には、TGFbパスウェイや多能性に関係する遺伝子が有意に含まれていた。最後に、地上コントロール群・宇宙飼育群から回収した精子を用いて次世代マウスを作製し、F1肝臓のtranscriptomeを解析すると、19遺伝子の発現上昇が観察された。これら発現変動遺伝子に対して、父親マウスの精巣でATF7結合が変化した遺伝子群と比較すると、統計的に有意な重複が検出された。これらの結果から、宇宙飼育に関連したストレスによって誘導されたエピゲノム変化が直接、子供のエピゲノム状態・遺伝子発現制御に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の解析結果の通り、マウスの精子細胞群から、さらに単一成熟精子画分であるHRCSを精製し、これを用いることで、信頼性の高いエピゲノム解析・トランスクリプトーム解析が可能である。今回は、父親マウスの宇宙環境飼育が成熟精子に与える影響について、新たな知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請に関する実験データは既に取り終えており、現在、宇宙飼育マウスの論文を投稿中である。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも、投稿中の論文の受理に時間を要しているため。次年度の予算は、論文投稿費及び追加実験に使用する。
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