2019 Fiscal Year Research-status Report
内在性レトロエレメントLINE-1のDNA損傷誘導性選択的転移による発がん機構
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18K06191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯島 健太 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (20565626)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LINE-1 / DNA損傷応答 / 細胞老化 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
① DNA損傷誘導時のLINE-1新規挿入部位の網羅的解析 LINE-1挿入部の網羅的解析にはLINE-1転移成立時にブラストサイジン(Bsd)耐性をもたらすLINE-1転移レポーター(pL1-Bsd)を使用した。X線照射により誘導されたBsd耐性コロニーのゲノムDNAについて次世代シーケンサーにより網羅的に新規挿入部位を同定した。DNA損傷で誘導されるLINE-1タンパクの分布パターンから、LINE-1新規挿入部位として、p53の標的となるがん抑制遺伝子群の割合の増加が期待される。現在次世代シーケンサー出力データについて解析を進めた。現在、網羅的解析データのバリデーションを進めており、DNA損傷誘導性のLINE-1転移の細胞がん化促進への積極的・直接的な寄与を明らかにする。 ② LINE-1転移を介したがん遺伝子誘導性細胞老化の解除 DNA損傷に応答して、アポトーシス、一過的細胞周期停止、および細胞老化など多様な細胞応答が誘導されるため、LINE-1挿入部位と細胞表現型の関連付けを行うのは複雑度が高く困難である。従って、LINE-1選択的挿入の発がん過程への関与を明らかにするために、ドキシサイクリン(Dox)誘導性Ras、および他のがん遺伝子の活性化誘導によって細胞老化を誘導する。LINE-1転移のBsdレポーターを導入した後、Dox添加により細胞老化を誘導し、BsdとDoxの共処理を継続して行った。その結果、Dox添加条件下においてがん遺伝子発現を維持しつつ、細胞増殖を開始する細胞群を得ることに成功した。このような細胞集団よりゲノムDNAを抽出し、nrLAM-PCRを用いて、次世代シーケンサーによりLINE-1新規挿入部位を同定した。現在、同定されたLINE-1新規挿入部位の重複性、および、がん遺伝子誘導性の細胞老化との機能的関連性について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の研究に関する論文作成へのエフォートが増大したため、本研究の進捗に若干の遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
がん遺伝子による細胞老化がLINE-1転移により解除されたクローンにおいて、LINE-1転移により破壊、あるいは修飾された遺伝子を、発現ベクターにより相補、あるいはsiRNAによる発現抑制を行い、細胞老化状態が再誘導されることを確認することで、LINE-1挿入の直接的な細胞老化解除への寄与を裏付ける。本過程においては、細胞老化の解除に寄与する遺伝子が無作為に抽出されるため、未知の発がん関連遺伝子群の同定が期待できる。 LINE-1の選択的挿入メカニズムを明らかにするために、LINE-1リボ核酸-タンパク複合体の細胞からの単離・精製を目的として、タグを付加したLINE-1タンパク発現細胞株を樹立した。本細胞株を用いてLINE-1を標的ゲノム上に“ガイド”する機構を明らかにする。 また、LINE-1転移反応過程で誘導されるDNA二重鎖切断部位を網羅的に解析し、LINE-1転移過程での損傷遺伝子群を探索し、LINE-1の発がん過程への寄与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度助成金に関して必要な消耗品の購入には届かないごく少額の余剰金が生じた。本余剰金については、次年度の交付金と合わせて消耗品などに充当し有効に執行する。
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