2019 Fiscal Year Research-status Report
p53とAMPKが織りなす多階層的ながん抑制システムの統合解析
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18K06206
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮本 崇史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50740346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | AMPK / オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、転写因子p53による代謝制御が、がんを抑制する上で重要な役割を担っていることが明らかにされている。このp53による代謝制御を介したがん抑制メカニズムでは、がん治療上の標的分子の1つである5'-AMP-activated protein kinase (AMPK)の時空間的な活性制御を適切にコントロールする必要がある。しかし、p53がどういったストレス情報に対して、約20あるp53標的代謝関連遺伝子の内、どの代謝関連遺伝子の発現を同時に調節するのか、そして様々な代謝関連遺伝子の協奏的発現調節によって創り出される「細胞内の栄養環境の変化」という情報が、AMPKの活性レベルを時空間的にどのように変化させていくのかは十分に理解されていない。またAMPK活性レベルの細胞内における時空間的な変化がp53からのインプットによってどのように変化するのかについても十分に明らかにされて いない。 昨年度はオルガネラ膜上におけるAMPKの活性ダイナミクスをモニタリングするための技術開発に成功した。本年度はがん細胞株における時空間的なAMPKの活性ダイナミクスを検討した結果、多くのがん細胞株ではオルガネラの形態変化が生じていること、さらにこのオルガネラの形態変化がAMPKの活性ダイナミクスに影響している可能性を示唆するデータを得た。また、オルガネラの膜組成において重要な脂質代謝の変化も、AMPKの活性ダイナミクスに影響を与える結果を得た。オルガネラ膜上におけるAMPKの活性はヘテロジェナイティであり、ここにはオルガネラ膜の流動性=脂質組成が関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p53による代謝制御とAMPKの直接的な関連性については検討段階であるが、代謝変化に伴って変化するオルガネラの形態変化等がAMPKの活性ダイナミクスに影響する結果を得つつある。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
p53による代謝制御は複雑であるため、細胞を様々な代謝条件で培養することでAMPKの時空間的な活性ダイナミクスを観察していく。 一方でオルガネラ膜上におけるAMPKの活性レベルは不均一であるため、これらを統合的に解析する画像処理技術の必要性が明らかになってきた。今年度はその辺の技術解析も合わせて進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
5931円の繰り越し金については端数であり、翌年度への試薬購入費として使う予定である。
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