2019 Fiscal Year Research-status Report
WNK-Wntシグナルによる神経分化制御機構の解明
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18K06208
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
澁谷 浩司 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30261324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | WNK / β-catenin / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は高血圧症PHAII原因遺伝子WNKの解析から生体内において、WNK→SPAK/OSR1→共輸送体というシグナル伝達経路が腎臓における血圧調整に関与することを示してきた。一方、WNK1は遺伝性知覚ニューロパチー(HSANII)の原因遺伝子でもあり、このWNKの神経系における機能を解明するため、解析を進め、昨年度までに周辺因子としてGSK3βを単離し、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析を進め、SggがWNKシグナル伝達経路の新規下流因子として機能すること、ほ乳類でもGSK3βがWNKシグナル伝達経路の下流因子として機能し、Lhx8の発現に関与することを明らかにし、WNKシグナルの神経分化への関与及びその制御機構を示した。 2019年度はWntシグナルの中心分子であるβ-cateninの制御へのWNKシグナルの関与について、解析を進めた。その結果、WNK1及びWNK4のノックダウンによりWntシグナル標的遺伝子であるAxin2やc-Junの発現が抑制されること、この抑制はβ-cateninより上流分子ではレスキューできないことなどから、WNKはβ-cateninに対して働いていることを明らかにした。さらにWNKのノックダウンはβ-cateninタンパクを消失させること、この消失はユビキチンープロテアソーム系のタンパク分解阻害剤であるMG132の存在により抑制されること、β-cateninのユビキチン化がWNK1,4の強制発言により抑制されことを明らかにした。これらの結果はWNKの存在がβ-cateninタンパクの安定性に関与することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WNK1,4によるWntシグナルにおける重要分子であるβ-cateninとの関係を明らかにできたこと、また、その制御機構も明らかになりつつあり、今後の解析を進めることにより、これらのシグナル系の詳細な分子機構も明らかにできると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
主に培養細胞系を用いた解析により、WNKシグナルとβ-cateninとの関係について解析が進んでいることから、これらの関係をより詳細な解析を進め、これらシグナルクロストークの仕組みを重点的に進める。Wntシグナルは神経発生や神経分化においても重要な働きをしている事が知られており、WNK遺伝子の神経分化における役割がこの点からも明らかになると考えられる。
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