2020 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ(液胞/リソソーム)による細胞周期制御機構の解明
Project/Area Number |
18K06211
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
神 唯 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (40802335)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 液胞 / リソソーム / 酵母 / TORC1 / BUR1 / SGV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物は細胞分裂時に細胞の設計図に相当する染色体を娘細胞へと分配する。さらに染色体分配を監視するチェックポイント機構を有し、細胞周期を厳密に制御している。近年の研究から染色体のみならず細胞小器官 (オルガネラ)も細胞分裂時に娘細胞へ能動的に分配されることが分かってきた。申請者はオルガネラ分配の分子制御機構の研究を進めていく中で、オルガネラの一つである液胞/リソソームが細胞周期進行に必須であることを見出した。この発見は、染色体の分配と同様に、オルガネラ分配も生物の生育にとって必須であることを示している。 「液泡は細胞周期の進行に必須である」ことは明らかとしたが (Jin and Weisman, 2015)、その分子的詳細は不明である。その詳細を明らかにするために、申請者は、液胞を介した細胞周期制御に関わる新規因子の同定を目指し、液胞分配変異体との合成致死変異体スクリーニングを行った。結果、液胞変異体との合成致死性を示す遺伝子としてBUR1を同定した。遺伝学的解析からBUR1はTORC1シグナル伝達経路と密接に関与することを明らかにした。現在、BUR1機能解析結果をまとめ、論文を投稿中である。 また、申請者のこれまでの研究から、細胞周期の新たな制御 (オルガネラチェックポイント)の存在が強く示唆されており、遺伝学的スクリーニングによりオルガネラチェックポイント制御に関わる可能性のある候補遺伝子を複数同定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心である、Bur1の解析から、分子的役割に不明な点が多いBur1 CDKの知見が蓄積したと考えている。またBur1とTORC1の密接な関係性が明らかになったことで、TORC1経路に関する知見も蓄積した。Bur1の研究は、一連の遺伝学、生化学、細胞生物学、さらには質量分析、次世代シークエンサーなど新しい手法も織り交ぜながら、今後の指針となるような研究の進め方を示せた。 また今後につながる研究として、復帰変異体スクリーニングによりオルガネラチェックポイント制御に関わる可能性のある候補遺伝子を同定している。小規模なスクリーニングながら、復帰変異体11から原因遺伝子7つを同定し、その内3つの遺伝子については複合体を形成することが報告されており、今後のこれらの解析を進めることで、未だ明らかでないオルガネラチェックポイントの理解に繋がると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) BUR1機能解析の研究については、前述したように論文投稿中である。必要であれば追加実験を行い、一刻も早い研究結果の公表を目指す。 2) オルガネラチェックポイントの存在の有無を明らかにするためのスクリーニングから、いくつかの変異体の候補遺伝子の既知の機能から類推すると、液胞成熟活性化のための転写制御の存在が示唆された。転写制御の分子機構解明に向けて候補遺伝子について解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
コロナによる研究活動制限のため、想定より論文投稿までに時間を要した。そのため、今後追加実験などが必要になると考え、次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(5 results)