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2019 Fiscal Year Research-status Report

エフリン受容体シグナルの破綻によるがん悪性化機構の解明

Research Project

Project/Area Number 18K06215
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

加藤 裕教  京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50303847)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywordsがん / エフリン / グルコース / 神経膠芽腫
Outline of Annual Research Achievements

エフリン受容体(Eph)ファミリーは、正常な組織においてはリガンドであるephrinと結合することで、細胞内のチロシンキナーゼ活性が上昇し、神経軸索ガイダンスなど発生過程において様々な役割を担う。一方、がん細胞におけるEph受容体は本来のシグナル伝達とは異なり、ephrin非依存的に働くことで細胞の増殖や運動性の促進など、がん悪性化に関わっていることが多数報告されている。特にephrin受容体ファミリーの中のEphA2は、神経膠芽腫を含め様々ながん細胞において高い発現が認められており、がん悪性化との関連が注目されている。がん細胞におけるEphA2は、897番目のセリンがMAP kinaseカスケードの下流で働くRSKによりリン酸化を受け、リガンド非依存的にシグナルを流すことで細胞運動の促進など、がん悪性化に繋がることがこれまでにも報告されている。今年度は神経膠芽腫細胞を用いて、EphA2の高い発現量が神経膠芽腫細胞に及ぼす影響について検討を行った。その結果、グルコース飢餓においてEphA2の897番目のセリンのリン酸化が亢進していることが明らかになった。さらに、グルコース飢餓によるEphA2のリン酸化には活性酸素種の蓄積が関与していることが見出された。また、神経膠芽腫U251細胞を用いて、EphA2欠損細胞をCRISPR/CAS9システムによって作成し、グルコース飢餓におけるEphA2の役割を検討した。その結果、グルコース飢餓においてEphA2 欠損細胞は、コントロール細胞と比較して有意に細胞生存率が低いことが明らかになった。以上の結果から、EphA2は低グルコース状態において897番目のセリンがリン酸化を受け、その結果低グルコース環境における神経膠芽腫細胞の生存維持に関わることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究計画調書に記載した今年度における研究計画では昨年度に引き続き、1)神経膠芽腫細胞において過剰なEphA2の発現によって制御される遺伝子の網羅的解析、2)神経膠芽腫においてEphA2と複合体を形成するタンパク質の網羅的解析、3)EphA3による神経膠芽腫細胞の凝集体形成制御の解析、を計画していた。2)については昨年度、EphA2が高発現する神経膠芽腫細胞においてEphA2と細胞内で相互作用するタンパク質の解析を行い、その中からアクチン細胞骨格と相互作用を示すFilamin分子が候補に挙げられた。そこで今年度は、EphA2とFilaminとの相互作用をin vitroにおいても確認した。さらに、ヒトのFilaminに対して発現抑制効果があるsiRNAを使って、神経膠芽腫細胞においてFilaminの発現抑制を行いその影響を調べた。その結果、EphA2による神経膠芽腫細胞の増殖作用がFilaminの発現が下がることで抑制される結果が得られている。一方で、低グルコース環境下ではEphA2の897番目のセリンのリン酸化が起こり、そのリン酸化にはアミノ酸トランスポーターxCTによる活性酸素種の蓄積が関わっていることを明らかにした。神経膠芽腫U251細胞を用いて、CRISPR/CAS9システムを用いてEphA2が欠損した神経膠芽腫U251細胞を樹立し、その細胞を用いてEphA2の発現がグルコース飢餓における細胞の生存性に関わっていることを示す結果が得られた。3)については、Flagタグを付加したEphA3を安定に発現する神経膠芽腫細胞の樹立をした。その細胞を用いて細胞溶解液を抗Flag抗体で免疫沈降を行い、EphA3と細胞内で相互作用しているタンパク質について質量分析法を用いた網羅的な解析を既に行っている。今後解析結果から、候補分子の同定につながることが期待される。

Strategy for Future Research Activity

EphA2とFilaminとの相互作用については、Filaminに対するsiRNAによるノックダウンによるEphA2シグナルへの影響や細胞内局在、機能等への影響を検討していく。また、質量分析法により同定されたEphA2と相互作用の可能性がある他の候補タンパク質についても同様に解析を行い、各タンパク質とEphA2との結合の意義を探る。また、正常なグリア細胞におけるシグナル伝達と比較検討することで、神経膠芽腫でのみ大きく変化しているシグナル伝達経路を同定する。EphA3についても特異的に結合するタンパク質の同定を行う。その後、接着状態で培養した細胞と浮遊状態で凝集体を形成させた細胞を回収し、EphA3との細胞内での相互作用の変化を調べるとともに、凝集体形成への関与について同定された遺伝子に対する欠損細胞を樹立することで明らかにしていく。一方、EphA2、あるいはEphA3シグナルに関わる分子として新たに同定された分子について、それらの活性を抑制あるいは発現を抑制させた神経膠芽腫細胞を作製し、in vitroにおける細胞増殖やスフェロイド形成の評価を行うとともに、免疫不全マウスの脳に細胞を移植することによってがんの悪性化をin vivoにおいても評価する。また、新たに同定されたシグナル分子については、EphA2あるいはEphA3によってどのようにその活性が制御されているか、各分子の機能欠失変異体を作製して解析するとともに、正常なグリア細胞におけるシグナル伝達と比較検討することで、神経膠芽腫でのみ大きく変化しているシグナル伝達経路を同定する。

  • Research Products

    (6 results)

All 2019

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] The cystine/glutamate antiporter xCT is a key regulator of EphA2 S897 phosphorylation under glucose-limited conditions2019

    • Author(s)
      Koji Teramoto, Hironori Katoh
    • Journal Title

      Cellular Signalling

      Volume: 62 Pages: 109329

    • DOI

      doi: 10.1016/j.cellsig.2019.05.014

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] The role of EphA2 in EGF-induced glioblastoma cell proliferation.2019

    • Author(s)
      Yuho Hamaoka, Hironori Katoh
    • Organizer
      4th International Cancer Symposium/Cancer Research Center of Lyon
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] グリオブラストーマ細胞増殖制御に関わるEphA2結合タンパク質の探索2019

    • Author(s)
      濱岡裕穂、渡邉祐三、加藤裕教
    • Organizer
      第92回 日本生化学会大会
  • [Presentation] Scribbleによるグリオブラストーマ細胞の増殖制御2019

    • Author(s)
      樋口翔太、加藤裕教
    • Organizer
      第92回 日本生化学会大会
  • [Presentation] グリオブラストーマ細胞におけるmTORシグナルによるグルコース依存性とxCT発現の制御2019

    • Author(s)
      山口一樹、加藤裕教
    • Organizer
      第92回 日本生化学会大会
  • [Presentation] グルコース飢餓によるアミノ酸トランスポーターxCTを介したEphA2リガンド非依存的シグナルの制御2019

    • Author(s)
      寺本昂司、加藤裕教
    • Organizer
      第66回 日本生化学会 近畿支部例会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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