2018 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスによる新規合成タンパク質の分解機構の解明
Project/Area Number |
18K06222
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
門脇 寿枝 宮崎大学, 医学部, 助教 (40568200)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 小胞体ストレス / タンパク質品質管理 / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の全タンパク質の約1/3は小胞体を通過して合成されることが知られている。しかし、様々な環境要因や遺伝子変異などにより小胞体内では折畳み異常の不良タンパク質が蓄積する。細胞は、このような小胞体ストレス状況に対抗するため、小胞体シャペロンによるリフォールディングや小胞体関連分解(ERAD)を介し不良タンパク質の蓄積を軽減する。また一方で翻訳抑制やmRNA分解を介して小胞体へさらなるタンパク質が輸送されることを防ぐ。近年、新たな小胞体負荷を避ける機構として、小胞体の予防的品質管理(ER stress-induced pre-emptive quality control: ERpQC)が報告された。ERpQCは、小胞体に挿入されるべきシグナル配列を持つタンパク質を細胞質で翻訳し直接分解する機構であるが、そのメカニズムは不明な点が多く残されている。本研究では、ERpQCの分子機構ならびに生理的意義と、その破綻による疾患の病態機構を解明することを目指している。 当該年度の研究により、ERpQCによる分解システムが、(1)分泌タンパク質などが小胞体ストレス時に、DerlinとSRP複合体およびトランスロコンの会合によって小胞体への輸送が阻害され、シグナル配列を保持したまま細胞質で翻訳されることと、(2)細胞質で翻訳された基質が小胞体膜型E3ユビキチンリガーゼHRD1、シャペロンBag6、p97 AAA ATPaseを介して効率よくプロテアソームで分解されることを明らかとした。本研究結果は、分泌タンパク質の合成が盛んな膵臓や、肝臓といった組織での小胞体への負荷を軽減するシステムの分子機構の解明に繋がり、小胞体の恒常性の破綻が原因となる疾患への治療標的になることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究実施計画どおりに、ストレス時に小胞体の恒常性維持に働く小胞体の予防的品質管理(ER stress-induced pre-emptive quality control: ERpQC)について、その分子機構を生化学的・分子生物学的に示すと同時に、その必要性を明らかにすることができ、本成果を学術論文に発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果をさらに発展させるため、本年度は (1)ERpQC基質がどのようにして、小胞体への輸送経路から細胞質への分解経路へその運命を変えるのか、(2)ERpQC基質になるものとならないものの振り分けはどのように決定されているのか、(3)ERpQCの破綻によって細胞内にどう影響を及ぼすか、といった課題について、タンパク質分泌の盛んな肝臓の細胞や異常タンパク質蓄積と疾患が注目される神経の細胞を用いて生化学的・分子生物学的手法からアプローチしていく。
|
Research Products
(7 results)