2018 Fiscal Year Research-status Report
LINC complex functions in signal transduction pathways at the nuclear envelope
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18K06226
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Research Institution | Ehime Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
檜枝 美紀 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (00380254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東山 繁樹 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核膜タンパク質 / LINC複合体 / LINC complex / nesprin / 情報伝達 / ゴルジ体 / SUN1 / 核膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等真核生物の細胞は核膜により細胞質と核、2つのコンパートメントに区切られている。そのため細胞質-核間の情報は、核膜孔を介した物質輸送により伝達される。そのような既知の情報伝達経路に加え本研究は、核膜を貫通するタンパク質複合体を利用した核-細胞質間の情報伝達経路が存在すること、さらにその分子メカニズムを明らかにすることを目的として取り組んでいる。 核膜は2枚の脂質膜により構成され、多様な膜貫通タンパク質を含む。その中で、核膜内膜を貫通するSUNタンパク質と、核膜外膜を貫通するnesprinタンパク質は核膜間腔で結合し、LINC (Linker of Nucleoskeleton and Cytoskeleton) 複合体を構成している。SUNタンパク質は核内のクロマチンや核ラミナ構成因子と結合し、nesprinタンパク質は細胞質においてアクチン骨格や微小管モータータンパク質といった様々な細胞骨格因子と結合する。近年、細胞外からの力刺激は接着因子等により細胞骨格に伝達され、さらにその後LINC複合体を介して核へ伝達され、核内小器官の構造や転写状態等を調節することが明らかになってきた。私達は、これまでに得た結果に基づき、「LINC複合体は細胞外、あるいは細胞質からの力刺激や、核内のヒストン修飾などの情報に応答し、組成の異なるLINC複合体を形成 (あるいは解離) することにより、核―細胞質間の両方向に情報を伝達する」という仮説を立てた。本年度は、複数の全長のLINC複合体構成因子のリコンビナントタンパク質の作成、得られたリコンビナントタンパク質の複合体形成能の確認を行った。LINC複合体による情報伝達が行われている例を探索し、LINC複合体が細胞膜における接着装置の成熟に関与することを新たに見出し、詳細な解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) ヒストン翻訳後修飾によるLINC複合体形成制御機構: SUN1タンパク質は膜貫通型タンパク質であるが、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いてリポソーム存在下で発現させると、全長のタンパク質が発現し、ゲルろ過により、3量体を形成していることが確認できている。ヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化に機能するメチル化酵素・SUV39H1の発現抑制により、SUN2の局在を引き起こすことを見出しており、現在SUV39H1に着目した解析を進めている。H3K9のメチル化が、SUN1タンパク質3量体形成に与える影響を解析するため、SUV39H1をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて発現させ、ヒストンに修飾を導入する系の確立を行っている。 (2) LINC 複合体相互作用因子の網羅的解析:抗体を用いた免疫沈降・質量分析により、微小管プラス端へのモータータンパク質KIF20AがSUN2特異的に結合する事を見出しており、その生理的意義を(3)において解析した。 これまでに得た結果を、細胞内において検証し、その妥当性を確認するために、当初予定していた(1)と(2)に加え、(3)LINC複合体の構築制御が核―細胞質間情報伝達に担う生理的機能についても解析を行った。 (3) LINC複合体を介した情報伝達機構の生理学的意義の解明:核近傍のゴルジ体構築は、これまでに広くしられているセントロソーム由来の微小管に依存したゴルジ体構築に加えて、ゴルジ体からのびる微小管に依存したSUN1/NPC、SUN2/nesprin-2/KIF20Aという2つの力のバランスにより核近傍に構築されていることを示す結果を得た。この結果は、LINC複合体が核内の状態に応答し、細胞質のゴルジ体に情報を伝達する一例であると考えられる。さらにLINC 複合体は、細胞接着装置の成熟に寄与することを示す結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ヒストン翻訳後修飾によるLINC複合体形成制御メカニズムの解析: (i) 引き続き、活性を持ったSUV39H1を発現させる方法、あるいはヒストンのメチル化を確認する方法を確立し、SUN1ンパク質の3量体形成に与える影響を解析する。またヒストンタンパク質は非常に小さいタンパク質分子であるため化学合成も可能である。そこで化学合成・修飾ヒストン分子の利用等他の方法による修飾ヌクレオソームの使用の可能性もさぐる。(ii) その後、nesprinを加えた系においてLINC複合体形成にヒストン修飾が与える影響を解析する。このときnesprinタンパク質にはスプライシングバリアントが非常に数多く存在するが、本研究ではGST-タグをつけたSUNタンパク質との結合領域(KASHドメイン) を用いる。(iii) さらにSUN1にはスプライシングバリアントが複数存在しており、それらの機能が異なること、SUN2との結合能に差があることを見出している。そこでSUN1スプライシングバリアント3種類を用いて、SUN1の3量体およびnesprin存在下でLINC複合体形成能を比較する。 (2) LINC複合体相互作用因子の網羅的解析: APEX2を用いて相互作用因子の解析を引き続き行う。 (3) 核膜タンパク質LINC複合体を介する核―細胞質間情報伝達の例として、私達は上述の(i)LINC複合体による核近傍のゴルジ体構築制御機構にH3K9のメチル化が影響すること (ii) LINC複合体は細胞膜に局在するFAの成熟に関与すること、を示す結果を得ている。今年はin vitroのリコンビナントタンパク質を用いて実験結果を踏まえて、その生理的意義の解明にも取り組む。
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Causes of Carryover |
計画どおり研究を進めたが、1%弱の誤差が生じた。この費用に関しては本年度10月以降に消費税があがり、2%程度の物品費の増加が見込まれるため、その費用に使用する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] X-ray-enhanced cancer cell migration requires the linker of nucleoskeleton and cytoskeleton complex2018
Author(s)
Imaizumi, H., Sato, S., Nishihara, A., Minami, K., Koizumi, M., Matsuura, N., Hieda, M
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 109
Pages: 1158-1165
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] LINC complex component, SUN1 play a role in the Golgi complex organization without nesprins2018
Author(s)
Matsumoto, T., Nishioka, Y., Isobe, M., Kametaka, S., Kimura, H., Matsuura, N., Hieda, M.
Organizer
第70回日本細胞生物学会(日本発生生物学会合同大会)