2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化におけるタンパク質不均等分配の網羅的解析とその役割の解明
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18K06228
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
紀藤 圭治 明治大学, 農学部, 専任准教授 (40345632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞老化 / プロテオミクス / 出芽酵母 / 不均等分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化のモデルとして古くから活用されている出芽酵母では、分裂回数を重ねるにつれて細胞老化が進み、やがては分裂能を失っていく。出芽酵母では、母細胞から娘細胞が出芽することで分裂するが、分裂に伴う細胞老化は母細胞でのみにみられ、娘細胞には分裂回数の蓄積による細胞老化の状態は受け継がれない。こうした分裂寿命における母細胞と娘細胞の不均等性は、細胞内小器官やタンパク質などの細胞内成分の質的不均等性によることが知られてきている。そうしたなかで、研究代表者はかねてから母細胞に不均等に分配される古いタンパク質の解析を進めており、本研究課題ではそうしたタンパク質不均等分配の細胞老化への関与を明らかにすることが目的である。そのため本研究では、寿命変異株を用いて分裂寿命の長短とタンパク質不均等分配の関係性を調べるともに、初期老化段階の出芽酵母で古いタンパク質を人為的に新規合成分子に置換することによる分裂余命の延長効果を解析する。 これまでに、主に短寿命変異株でのタンパク質不均等分配の解析を進め、野生株との差異がみられたことからタンパク質不均等分配と分裂寿命との関連性が示唆された。今年度は、長寿命変異株としてFOB1遺伝子(DNA複製フォーク結合タンパク質をコード)の欠損株での解析に着手した。まずは接合フェロモンを用いた同調培養に必要な遺伝子欠損(bar1遺伝子欠損)と合わせて、二重遺伝子欠損株の作製が完了した。次に、タンパク質不均等分配の解析のために必要となる同調培養の各種条件について、接合フェロモンによるG1期停止時間、母細胞と娘細胞を分離するための同調培養時間などを検討し、長寿命株での両細胞の分離と不均等分配解析のための実験系を構築することができた。現在は、質量分析を用いた古いタンパク質の不均等分配解析を進めており、野生株および短寿命株との差異について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
古いタンパク質の不均等分配について、分裂寿命への関与を明らかにすることが本研究の目的である。そのためのアプローチとして、寿命変異株での不均等分配の解析を進めている。これまでに短寿命株と野生株のタンパク質不均等分配の比較から、両細胞間で不均等分配されるタンパク質の種類や量に違いがあることを分かり、不均等分配と分裂寿命との関連性が示唆された。その後、短寿命株での解析をより充足させるとともに、長寿命株での解析を進めてきた。今年度はそのなかで、解析に用いる長寿命株の作製とそれを用いた解析系の構築が完了した段階にとどまり、実際の不均等分配の解析および野生株や短寿命株との比較には至らなかった。その主な要因は、二重欠損株の作製効率の低さと各変異株に応じた不均等分配解析系の最適化が必要だった点にある。なかでも各種変異株ごとの不均等分配解析系の条件検討は短寿命株でも必要であったこともあり、今後は解析系の改良も予定している。とくに、母細胞と娘細胞の分離に必要となる同調培養については、G1期細胞特異的なプロモーターで発現させた蛍光タンパク質を活用し、セルソーターによるG1期細胞の分離と同調培養を行う、とった別の方法の検討も進めていきたい。 また、初期老化細胞で特定の古いタンパク質群を新規生合成分子に置換することで、分裂余命へのタンパク質不均等分配に関与を解析する実験系については、10回ほど分裂した母細胞の効率的な単離手法の確立がとくに難航している。エストラジオールを用いて娘細胞を選択的に死滅させられるよう遺伝的改変を施した出芽酵母が、母細胞のみを濃縮するために一部で活用されており、そうした手法も組み合わせて初期老化段階の母細胞を単離する手法の確立を実現したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、長寿命株を中心に分裂寿命の違いとタンパク質不均等分配の関連性を比較解析していく。現在、短寿命株と合わせて2種類の寿命変異株を活用しているが、寿命と不均等分配の一般性を知るために、より複数の寿命変異株での解析にも着手する。その際、母細胞と娘細胞を分離するための同調培養手法として、各種変異株ごとの細かい条件検討の必要性が低いと思われるセルソーターを用いたG1期細胞の分離と同調培養方法の検討も進めていく。また、特定の不均等分配タンパク質の分解・再生実験系については、その実験系の構築が遅れている。とくに細胞集団のなかでわずかしか含まれない初期老化段階の母細胞を効率よく単離濃縮する手法の確立が難航しているが、これまでの母細胞のビオチン標識を活用した方法以外にも、薬剤依存的に娘細胞のみを死滅させられるよう遺伝的に改変した株の活用も進める予定である。
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[Journal Article] Identification of TGFβ-induced proteins in non-endocrine mouse pituitary cell line TtT/GF by SILAC-assisted quantitative mass spectrometry.2019
Author(s)
Tsukada, T., Isowa, Y., Kito, K., Yoshida, S., Toneri, S., Horiguchi, K., Fujiwara, K. Yashiro, T., Kato, T., Kato, Y.
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Journal Title
Cell Tissue Res.
Volume: 376
Pages: 281-293
DOI
Peer Reviewed
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