2018 Fiscal Year Research-status Report
Parkinの活性化と膜移行の再構成系および素反応の解析
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18K06237
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
山野 晃史 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (30547526)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RBRリガーゼ / ユビキチン / Parkin |
Outline of Annual Research Achievements |
Parkinは膜電位の低下した損傷ミトコンドリアをオートファジー依存的な分解(マイトファジー)に導くE3ユビキチンリガーゼである。Parkinは普段はサイトゾルに不活性型として局在しているが、ミトコンドリアの膜電位が低下すると、そのミトコンドリアへとリクルートし、活性化型となる。そして損傷ミトコンドリア上の様々な膜タンパク質をユビキチン化することが知られている。これまでほ乳類の培養細胞を用いた研究で、Parkin自身のE3ユビキチンリガーゼ、PINK1によるParkinのリン酸化、PINK1によるユビキチンのリン酸化をはじめとして、様々な因子がParkinのミトコンドリア移行に関与することが示唆されている。しかし、これらの報告の多くは当該分野でコンセンサスが得られていない上に、これまでのトップダウン的なアプローチでは、解析に限界がある。そこで、Parkinの膜移行に関わるタンパク質群を大腸菌に遺伝的に導入し、Parkinの膜へのリクルートとそれに連動する基質のユビキチン化を原核細胞内で再構成することを目指す。そして、マイトファジーの初期反応の根本的な理解につなげる。 まず、当該年度はParkinの膜移行に重要であるユビキチンシステムを大腸菌内で再構成できるか検討した。ヒトE1酵素、ヒトE2酵素であるUbcH7およびユビキチン遺伝子を大腸菌に導入して、IPTGによる発現誘導を行なったところ、E2とユビキチンの複合体(チオエステル結合で結合した中間体)を検出できた。また、そこにParkinを過剰発現することでParkinの自己ユビキチンも観察できた。これらの結果からParkinをE3酵素とするユビキチンシステムが大腸菌内でも機能していることが確かめられた。また、大腸菌内でPINK1がユビキチンをリン酸化できることも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、ヒトゲノムにコードされている40種類のE2酵素のうち、UbcH7が活性化型Parkinと相互作用することをほ乳類の培養細胞を用いて確認した。そしてヒトE1酵素とユビキチンと共にUbcH7遺伝子をプラスミドとして、大腸菌に導入した。IPTGによる発現誘導を行なったところ、E2とユビキチンの複合体(チオエステル結合で結合した中間体)を検出できたため、ユビキチンサイクルが大腸菌内でも機能することがわかった。さらにここにParkinを過剰発現することでParkinの自己ユビキチンも観察できた。したがって、ParkinをE3酵素とするユビキチンシステムを大腸菌内で再構成することができた。大腸菌内膜にアンカーするAtpFの膜貫通ドメインとPINK1を融合したAtpF-PINK1を発現するプラスミドを大腸菌に導入することでユビキチンのリン酸化を検出することに成功した。これらの結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。ただし、Parkinは大腸菌内では非常に不安定であるため、必要以上に過剰発現すると、不溶性画分に回収されることがわかった。したがって、今後、Parkinの膜移行を観察するためには発現量を適切に調整する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではすべての遺伝子をプラスミドとして大腸菌に導入したが、適切な遺伝子発現を制御するため、大腸菌のゲノムに組み込む必要があると考えられる。そこで、今後はまず、Parkinを含むユビキチンシステムとPINK1を大腸菌ゲノムに組み込むための実験系構築を行なう。そして、ゲノムに組み込んだ遺伝子の発現を確認した上で、Parkinが実際に大腸菌内膜へと移行しているかを調べる。Parkinの内膜移行は、内膜タンパク質のユビキチン化と連動していると予想されるため、ユビキチン化の有無を内膜移行の指標とする。
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Causes of Carryover |
2019年度は、ユビキチンシステムとPINK1をすべて大腸菌のゲノムに組み込む計画をしている。実験系の確立には多くの条件検討が必要となる。また、網羅的なユビキチンタンパク質の解析のために消耗品等の購入も増えることが予想される。そのため、繰越を行なった。
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Research Products
(2 results)