2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06251
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 貴史 金沢大学, 新学術創成研究機構, 特任助教 (50553765)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 複眼 / タイリング / ボロノイ分割 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は野生型(w)及びいくつかの小眼変異体(os, ey, Lobe, UAS-fng/c311-GAL4, UAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4)の成虫複眼の表面構造を捜査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べた。野生型の成虫複眼においては個眼は規則正しい六角形配置を示す一方で、小眼変異体では四角形配置を示すことが明確に示された。小眼変異体に関しては全ての系統が同様の表現系を示す訳ではなく、osが規則正しい複眼配置を示す一方で、eyやLobeは配置がやや不規則であり乱雑な部分が目立った。UAS-fng/c311-GAL4は規則正しい配置を示したが、眼の大きさに関して個体差が大きく、左右の眼についても大きさがかなり異なる場合が高頻度で観察された。RNAi(eya+so)/mirr-GAL4の表現系は他の小眼変異体に比べて四角形化の度合いがやや弱かった。この点に関しては、この系統の眼の大きさが他の系統と比べてやや大きかったために四角形化の傾向が比較的弱かったためと考えられた。 また平成30年度に続き、Laser ablationを用いて複眼内における張力分布を調べた。野生型(wt)、小眼変異体(os)および複眼の背側半分を欠損したハエ(UAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4)の蛹期における張力分布を解析した。その結果、野生型と比較して小眼変異体(os)では背腹軸方向の張力が前後軸方向と比べて相対的に強くなっていることが示された。しかしながら弱い四角形化を示すUAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4においてはこの背腹軸方向への偏向が野生型と比べて僅かに強い程度に留まっていることが明らかになった。 シミュレーションに関しては重み付きボロノイ分割を発展させた。この方法によって複眼のタイリングパターンを広く一般的に近似できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
live imagingによる複眼の発生過程の観察、捜査型電子顕微鏡(SEM)を用いた成虫複眼構造の解析、そしてLaser ablationによる張力分布等に関して実験がほぼ完了しており、順調に実験結果が得られている。またコンピュータシミュレーションについては当初の予定とは異なる方向に進んでいるが、ボロノイ分割を用いることによりタイリングメカニズムの形成機構の本質が明らかとなってきた。特に令和元年度においては重み付けボロノイ分割を発展させることにより、六角形や四角形配置だけでなくより乱雑な一般的パターンまでもがシミュレーションにより再現できたことは特筆すべき結果である。細胞骨格とタイリングの関係に関してはあまり綺麗な結果が得られておらず目立った進展はないが、全体としては実験とシミュレーションの両面において満足できる成果が得られていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては当初の予定から特に大きな変更点はないが、シミュレー ションの部分についてvertex modelでは四角形化が再現出来なかったため、四角形化を再現するボロノイ分割を主要なモデルとして用いている。現在は古典的なボロノイ分割を一般的なものへと発展させた重み付けボロノイ分割について精力的に調べている。今後もこの手法を用いて複眼におけるタイリングパターン形成の一般的なメカニズムを明らかにしていきたい。またvertex modelに関しても一般的なモデルを発展させた、細胞の圧力を考慮したモデルに取り組んでいる。こちらについても六角形だけでなく、四角形やさらに一般的なパターンを再現できるかどうかについて検討する。実験面については特に大きな変更点はない。今後は特に論文発表を視野に入れ、そのために必要と考えられる実験を重点的に行う予定である。
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