2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K06253
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 俊之 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (20324709)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Hes / Shh / 神経幹細胞 / 脳発生 / 脳進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tet-Onシステムを用いて神経幹細胞における遺伝子発現を任意に制御するTgマウスを作製し解析を進めた。胎生期から生後にかけて細胞分裂回数が少ない神経幹細胞が成体神経幹細胞として維持されると報告されている。そこで胎生期にEdUを投与し、EdUラベルを維持した細胞とHes1の発現量の相関を解析した。Hes1の高発現を維持したマウスでは、成体脳の脳室下帯においてより多くのEdUラベル保持細胞が認められ、これがニューロン分化能を持った神経幹細胞の増加に繋がることが示唆された。一方、野生型マウスの終脳背腹境界および腹側の脳室下帯におけるEdUラベル保持細胞とHes1発現量においては明らかな相関が認められなかった。 Hes1強制発現マウスでは神経幹細胞・前駆細胞の増殖が抑制されており、大脳皮質ニューロンの数は減少し、脳のサイズは野生型と比べて小さくなる。そこで、Hes1によって発現が抑制される細胞周期関連因子(cyclineD1/Cdk4)を神経幹細胞においてHes1と同時に発現させるTgマウスを作製し解析を行った。このマウスにおいてはHes1の高発現による細胞増殖能の低下が抑制されたが、大脳皮質の顕著な増大は認めなかった。 Tet-Onシステムを用いて、ShhまたはShhシグナルのエフェクターであるSmoothened (Smo) の活性型 (human SmoM2 (hSmoM2)) を発現するTgマウスおよびHes強制発現マウスとの掛け合わせにおいて、Doxycycline (Dox) 投与量と投与タイミングの調整を行い、ShhおよびhSmoM2の高発現により神経幹細胞・前駆細胞の増殖が促進され、胎児脳における脳室および脳室周囲帯の拡大、脳表面積の顕著な拡大が認められた。また、発生後期から出生時においてDoxの投与を中止することにより、成体脳において一部皺状の構造が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hes1, Hes5強制発現マウスの解析は順調に進んでおり、hSmoM2およびShhを発現するTgマウスについても解析可能なラインの選別はほぼ完了し、解析を進めている段階である。 hSmoM2強制発現マウスについてはある程度大脳表面積の拡大が得られる条件が得られているが、妊娠マウスのDox水の摂取量のばらつきなどにより、常に十分な再現性が得られるとは言い難い。また生後において大脳表面に皺状の構造が認められる段階まで進んでいるが、明らかな脳回・脳溝を認めるには至っていない。今後は妊娠マウスの腹腔内へのDox投与を併用するなどして、より顕著で再現性の高い表現形が得られるよう更に条件検討を進める。 またShh強制発現マウスはhSmoM2強制発現マウスと比較して神経幹細胞・前駆細胞の増殖促進活性が顕著であり、生後の生存が困難であるため、生後から成体の脳の表現形を解析することが十分に行われていない。今後Doxの投与量および投与タイミングを検討し、生後の解析が可能となるようShh発現量の調整を行う必要がある。 rtTAおよび他の候補遺伝子を脈絡叢特異的に発現させるための発現制御領域(エンハンサーおよびプロモーター)の検討を行い、TgマウスにおいてEGFPおよびrtTAを脈絡叢特異的に発現させることに成功している。今後更に検討を進め、最適な発現制御領域を用いたTgマウスを作製し、脈絡叢からの候補因子(分泌因子)産生による神経幹細胞の増殖・分化への影響の解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
Tet-Onシステムを用いてhSmoM2を発現するTgマウスについては、Doxの経口投与に加えて妊娠マウスの腹腔内投与を行い、大脳皮質拡大をもたらす最適な条件検討を行う。また、他のTgマウスライン(Hes1, Hes5, hHES4強制発現マウス等)との掛け合わせを行い、表現形への影響を解析する。Shh強制発現マウスにおいては、hSmoM2強制発現マウスと比較して神経幹細胞・前駆細胞の増殖促進活性が顕著であるため、生後の表現形を解析するために発現量の調整(Dox投与量および投与時期の検討)を綿密に行う必要がある。これにより生後の大脳皮質拡大および大脳皮質ニューロン数の増大をもたらす条件の最適化を行う。脳表の皺状の構造が顕著に認められれば、その形成パターンおよび形成メカニズムについて更なる解析を進め、哺乳動物の脳の進化メカニズムの解明に繋げる。 rtTAおよび他の候補遺伝子を脈絡叢特異的に発現させるための発現制御領域(エンハンサーおよびプロモーター)の検討を更に進め、それを用いた Tgマウスの作製・解析を進める。特に脈絡叢前駆細胞の増殖促進に関わると考えられるNotchシグナル・Shhシグナル関連因子の発現制御により、脈絡叢のサイズの増大を目指す。また神経幹細胞の増加をもたらす候補因子(分泌因子)を探索するため、脳室内への投与またはin utero electroporationによる強制発現により影響を解析する。活性が認められた因子をTgマウスにおいて脈絡叢特異的に発現させ脳脊髄液 (CSF) 中に分泌させることで、大脳皮質形成に及ぼす影響を解析する。
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Causes of Carryover |
今年度はトランスジェニックマウスの解析を中心に行い、分子生物学用試薬・プラスチック製品等に主に使用し、培養細胞を用いた解析に必要な培養試薬や免疫組織(細胞)化学用試薬等の購入は次年度以降に回す形となった。 次年度は主に遺伝子改変マウス解析にかかる消耗品(分子生物学用試薬・免疫組織(細胞)化学用試薬(各種抗体等)・プラスチック製品等)に加え、一部細胞培養試薬 (各種細胞株、NS cells、human iPS cells等培養用)に使用する。また一部はデータ収集・整理及び成果発表にかかる費用(データ印刷・複写費、現像・焼付費、学会参加のための国内旅費)として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)