2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞キラリティが左右非対称な内臓捻転を誘導する力学的機構の解明
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18K06255
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲木 美紀子 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10747679)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞キラリティ / 細胞スライド / 左右非対称性 / 器官形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエ胚の後腸をモデル系として、生体内で細胞キラリティが内臓器官の左右非対称性を形成する仕組みの解明を目指す。ショウジョウバエ胚の後腸は、初め左右対称な構造として形成された後、左ねじ回りにねじれ左右非対称な形態となる。後腸上皮細胞は、回転前に細胞の長軸が左に傾いた左右非対称な形態(細胞キラリティ)を示し、それが後腸回転後には解消されることから、細胞キラリティの後腸回転への関与が示唆されてきた。申請者は、これまでの研究で、3次元バーテックスモデルを用いたシミュレーションおよびライブイメージングにより、回転前の細胞キラリティが細胞スライドと名付けた新規の細胞挙動により、左右非対称な内臓回転へと変換されることを示した。細胞スライド時にライブイメージングによって細胞境界を追跡すると、境界接合点を維持したまま、反時計回りに細胞境界が回転していた。これらの結果は、細胞スライド時に、細胞自身が回転運動している可能性を示唆している。本研究では、蛍光ビーズの注入による細胞内回転運動の検出を試みた。野生型および逆位の突然変異体Myosin31DFを用いて実験を行ったが、蛍光ビーズの回転運動に左右差は見られなかった。現在は、細胞キラリティの決定因子であるMyosin31DFの過剰発現系を用いて、細胞内のアクチン細胞骨格系の左右非対称な動態の検出を試みている。その過程で、Myosin31DF過剰発現個体の後腸では、細胞スライドが増強され、後腸のねじれも増強されることを見出した。細胞スライドと後腸のねじれを定量化し、野生型と比較して有意に増加していることを示した。また、ショウジョウバエにおいて左右性を示す成虫器官の一つである精巣を用いたRNA干渉法による左右性決定に関わる新たなアクチン関連遺伝子の探索で得られた2遺伝子について、突然変異体を用いて精巣での表現型の確認を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内のアクチン細胞骨格系の左右非対称な動態の検出には至っていないが、新たにMyosin31DFの過剰発現系を用いて試みているため。また、Myosin31DFの過剰発現個体において、細胞スライドの後腸回転に及ぼす定量的な寄与が明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞キラリティの決定因子であるMyosin31DFの過剰発現系を用いて、細胞内のアクチン細胞骨格系の左右非対称な動態の検出を試みる。ショウジョウバエ胚の後腸、および幼虫の表皮、気管系を用いて観察を行う。細胞キラリティにより誘導される細胞スライドの組織変形における定量的な寄与が明らかになりつつあるため、他の突然変異体やex vivo培養系を用いた細胞スライドと組織変形の定量解析を進める。精巣のスクリーニングにより得られた遺伝子に関して、胚の後腸での表現型を調べる。
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Causes of Carryover |
蛍光実体顕微鏡を購入予定であったが、共通機器で賄うこととし、さらに必要となった系統購入費、分子生物学試薬、イメージング用消耗品試薬購入費に当てる計画である。
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