2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a culture system for in vitro derivation of haematopoietic stem cells from murine embryonic stem cells
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18K06262
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 峰太郎 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70194454)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ES細胞 / 造血幹細胞 / 造血性内皮細胞 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はマウスES細胞から造血幹細胞(HSC)を分化誘導する培養系の確立である。HSCはマウスの発生において背側大動脈の造血性内皮細胞(HEC)(胎生9日)からプレ造血幹細胞(pre-HSC)(胎生10~11日)を経て分化する。そこで、マウス胎仔からセルソーターで単離したHECとpre-HSCを培養してHSCに分化させる実験系の確立を先ず目指した。 胎生11日のpre-HSCを間葉系細胞株と共凝集培養すると、長期骨髄造血再構築能を持つHSCに分化する。この培養系を単純化するために、間葉系細胞株を用いずに特定のサイトカインのみでpre-HSCを無血清培養したところ、同様にHSCを誘導することが出来た。これにより、pre-HSCからHSCへの分化の最終段階に必要十分なシグナルを同定することが出来た。 胎生10日のpre-HSCは、間葉系細胞株との共凝集培養だけではHSCに分化しない。背側大動脈でのHSCの発生において血管内皮が誘導的な役割を担うと推測し、間葉系細胞株に加えて血管内皮細胞株を凝集培養に混在させたところ、予想通り胎生10日のpre-HSCからHSCを誘導することが出来た。この実験系を用いてpre-HSCの分化の初期段階に必要なシグナル分子を同定することが可能である。 胎生9日のHECは、間葉系細胞株と血管内皮細胞株との共凝集培養によってもHSCに分化しない。一方、HECを含む全ての胎仔細胞を間葉系細胞株と共凝集培養するとHSCが誘導された。HECからHSCを誘導するためには、血管内皮細胞に加えて、それ以外の何らかの細胞が共存しなければならないと考えられる。 以上の研究結果は、HECからpre-HSCを経てHSCに至る分化過程において必要なシグナルが変化することを示している。それぞれのシグナルを明らかにすることが、ES細胞からHSCの分化誘導を実現するために最も重要であり、そのための実験系が本研究で確立されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マウス胎仔からセルソーターで単離したHECをHSCに分化させる培養系を先ず確立し、次いで、マウスES細胞から分化誘導したHECをこの培養系に乗せることによりHSCに分化させる計画である。これまでに、(1)胎生11日のpre-HSCを特定のサイトカインだけでHSCに誘導できること、(2)胎生10日のpre-HSCを間葉系細胞株と血管内皮細胞株との共凝集培養によってHSCに誘導できること、(3)胎生9日のHECを含む胎仔細胞を間葉系細胞株との共凝集培養によってHSCに誘導できること、を明らかにした。pre-HSCからHSCへの分化段階に必要十分なシグナルが同定され、pre-HSCの初期分化に必要なシグナルを同定するための実験系が整備されたことから、計画は概ね順調に進んでいる。一方、HECからpre-HSCへの分化段階に必要なシグナルを同定する実験系は整備途上であり、純化したHECからHSCを誘導する培養条件を見つけることが急務となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
胎生10日のpre-HSCを間葉系細胞株と血管内皮細胞株との共凝集培養によってHSCに誘導できることから、pre-HSCの初期分化に必要なシグナル分子を血管内皮細胞株が発現していると考えられる。今後、遺伝子発現プロファイリングでその候補を推測し、阻害剤による阻害実験と候補遺伝子のノックダウンにより責任分子を同定する。同定されたシグナル分子で血管内皮細胞株を代替し、培養系を単純化できると考えている。 胎生9日のHECからpre-HSCへの分化段階に必要なシグナル分子を探索するために、HECと間葉系細胞株と血管内皮細胞株の共凝集培養を用いて、HSCが誘導されることを指標にシグナル分子のスクリーニングを行う予定である。 これまでにセルソーターで単離してきたHECとpre-HSCはそれぞれ均質な細胞集団ではないため、真のHECとpre-HSCを濃縮する必要がある。そのために、既存のsingle cell RNA-seqデータベースを利用して、HECとpre-HSCの特異的なマーカー遺伝子を新たに探索する。候補となるマーカーに基づいてマウス胎仔から細胞を単離し、それまでに確立したHSC誘導培養系を用いてHSCに分化することを確認し、HECとpre-HSCが純化されたことを証明する。 胎仔から純化したHECとpre-HSCのsingle cell RNA-seqを行い、それぞれの分化段階で活性化しているシグナル経路を推測する。これらの情報を基にしてHSC誘導培養系を改良し、無血清・無フィーダー細胞でのHSC誘導をめざす。同時に、ES細胞から分化誘導したHECのsingle cell RNA-seqを行い、胎仔から純化したHECとのシグナル活性化の違いを明らかにする。この情報を基にしてES細胞の分化誘導条件を適正化し、胎仔から純化した場合と同等の真正のHECを誘導する。このHECをHSC誘導培養系に乗せることで、HSCまで分化誘導できると考えている。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表する段階に至っていないため、旅費、論文投稿費、論文掲載費などを次年度に繰り越した。次年度は、繰越分を合わせて、移植実験用のマウスの購入・飼育費を増やす予定である。
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Research Products
(1 results)