2019 Fiscal Year Research-status Report
心臓の組織再生に関わるIslet-1の転写制御機構の解析
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18K06269
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
木下 勉 立教大学, 理学部, 教授 (30161532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堅田 智久 杏林大学, 医学部, 助教 (10527229)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心筋再生 / Islet-1 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織再生力の高い両生類であるアフリカツメガエルでは、心筋再生過程において心筋前駆細胞の制御遺伝子であるislet1(isl1)の転写が誘導される。isl1遺伝子の転写制御機構を解明するために、本プロジェクトの2018年度の研究では、isl1遺伝子の上流に保存性の高い領域(MCR)が8つ存在し、これらの領域に作用するisl1転写調節遺伝子として7遺伝子の候補が存在することを明らかにした。そこで2019年度では、転写調節遺伝子の作用機構を解析した。 アニマルキャップから心筋分化を誘導するin vitroの実験系を用いて、7つの候補遺伝子がisl1の転写に及ぼす影響を調べた結果、mef2c、hoxa5、hif1a、pou5f3.2の4遺伝子をisl1の発現量に影響を与える遺伝子として絞り込むことができた。次に、これら4遺伝子の結合モチーフが最も多く存在する上流-274KのMCR領域に着目しレポーターアッセイを行った結果、hif1aはisl1の発現を正に、pou5f3.2は負に調節することがわかった。一方、hoxa5及びmef2cについては、isl1の上流-175KbpのMCR領域に対して負に作用することが分かった。 以上の結果から、貧血応答因子であるhif1aと細胞の未分化性維持に関わるpou5f3.2が心筋損傷後の初期にisl1の転写を調節し、心筋分化・形成に関与するmef2cとhoxa5は心筋再生後期にisl1の転写を調節していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初に、isl1の転写に及ぼす転写因子の影響を調べる実験系の検討を行った。初期発生におけるisl1遺伝子の発現は、心臓形成に先立ち神経形成において顕著な発現を示すため、実験系として初期胚全体を使うと神経形成におけるisl1の転写が混入するため、心臓形成に限定したisl1の転写を解析できない。そこで、多分化能性をもつアニマルキャップにnodal2とgata4を導入してin vitroで心臓形成を誘導するバイオアッセイ系を利用することにした。この実験系を利用することにより、7候補遺伝子のうち、mef2c、hoxa5、hif1a、pou5f3.2の4遺伝子がisl1の発現量に影響を与える遺伝子であることを明らかにすることができた。また哺乳動物の転写モチーフを参考に8箇所のMCR領域に存在する転写モチーフを解析した結果、2カ所のMCRが4転写因子の結合モチーフを備える最有力候補であることがわかった。それぞれのMCR領域をゲノムから単離しレポーター解析を行った結果、この2カ所のMCR領域に4転写因子が作用する可能性を示すことができた。しかし、4転写因子が2カ所のMCR領域に存在する結合モチーフに直接作用するのか否かを明らかにすることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
損傷直後にisl1の転写を調節する因子と考えられるhif1aとpou5f3.2について、上流-274KのMCR領域を用いてChIPアッセイを行い、これらの転写因子が上流-274KのMCR領域に直接結合して転写制御を行うのか否かを明らかにする予定である。このMCR領域には、hif1a及びpou5f3.2が結合し得るモチーフが2カ所存在するため、CRISPR/Cas9法を用いてそれぞれの結合モチーフに変異を導入し、isl1の発現への影響を解析する予定である。同様の手順によりmef2cとhoxa5についても上流-175KbpのMCR領域を用いたChIPアッセイを行い、転写制御が転写因子の直接結合によるのか否かを解析する計画である。加えて、これらの転写制御モチーフの存在するDNA領域のクロマチン構造についてエピゲノム解析を行う予定である。また、心筋再生の初期過程にある心臓にhif1aとpou5f3.2の活性化因子あるいは阻害因子を投与し、これらの因子が実際にisl1の転写誘導に関わっているのか否かをin vivoで確かめる計画である。 これらの結果を総合して、心筋再生におけるisl1の転写制御機構をまとめ、その成果を学会および論文で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策により、年度末に計画していた免疫染色とChIP解析を実施することができず、これらの実験のために購入予定であった抗体、免沈用試薬の消耗品が未使用分として残った。これらの繰越金は2020年度の前半に、免疫染色とChIP解析を行うための消耗品費として使用予定である。また2020年度では、isl1の転写制御に関わるプロモーター領域のクロマチン構造を解析するために、通常の組織解析用試薬、遺伝子発現解析用試薬に加えてエピゲノム解析用試薬が必要となる。そのため2020年度の研究では、研究成果を発表するための旅費、論文作成費を除いた残りの助成金を試薬購入の消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)