2019 Fiscal Year Research-status Report
光合成の強光耐性におけるタンパク質合成系の順化機構の役割
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18K06276
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
西山 佳孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30281588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 環境 / ストレス / タンパク質 / 遺伝子 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系II(PSII)の強光順化におけるカロテノイドの役割:シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803を異なる光強度の下で培養した後、光化学系IIの強光耐性を解析した。強光(1,000 μmol photons m-2 s-1)で培養した細胞では、通常光(70 μmol photons m-2 s-1)で生育させた細胞と比較して、ゼアキサンチンやエキネノン、ミキソキサントフィルなどのカロテノイドが高蓄積し、PSIIの光阻害が著しく緩和した。リンコマイシン存在下でPSIIの光損傷を解析したところ、強光で培養した細胞と通常光で培養した細胞の間に差がなかった。したがって、強光順化の過程でPSIIの修復能力が増大したことが示唆された。さらに、強光順化の過程で、PSII強光耐性は二段階で増大した。細胞を通常光から強光条件に移すと、PSIIの強光耐性は最初の4時間で急速に増大し、その後緩やかに増大した。この後半の段階に、カロテノイドの高蓄積や、一重項酸素の産生抑制、タンパク質合成能力の増大が見られた。一方、ゼアキサンチン、エキネノンおよびミキソキサントフィルを欠損したSynechocystisの変異株ΔcrtRΔcrtOでは、後半の段階でPSII強光耐性の増大やカロテノイドの高蓄積、一重項酸素の発生抑制、タンパク質合成能力の増大が著しく損なわれた。これらの結果から、強光順化の過程で高蓄積したカロテノイドは、一重項酸素の産生を抑制してタンパク質合成を保護し、PSIIの修復能力を増大させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアノバクテリアを用いた研究では、強光順化に伴うカロテノイドの変化と光合成の強光耐性の関係が明らかになってきた。その成果を論文にまとめ、2020年3月に国際誌に投稿した。現在、査読を終えた論文を改訂している。植物を用いた研究も、重要なデータが出てきており、概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、光合成の強光順化に翻訳因子EF-Tuの誘導および特異的なカロテノイドの蓄積が重要な役割を担っていることがわかってきた。しかし、この2つの要因の関係がまだ不明確である。次年度は、強光順化におけるEF-Tu誘導とカロテノイド蓄積の関係を明らかにしたい。また、今年度の研究によって、ミキソキサントフィルという配糖体カロテノイドが光合成の強光順化に重要な役割を果たすことがわかってきた。この特殊なカロテノイドの機能や局在生を明らかにする必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度、当初の予定通り強光順化に関する成果を論文にまとめ投稿したが、論文の査読結果が戻ってきたのは次年度になってからであった。現在、論文を改訂中である。当初、この論文の掲載費を計上していたが、改訂論文を再投稿して受理されてから掲載費が発生するので、論文掲載費を次年度に繰り越す。
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Research Products
(19 results)