2021 Fiscal Year Research-status Report
クレブソルミディウムのTIR1を介さないオーキシン応答を誘導する転写因子の探索
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18K06280
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀 孝一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70453967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物進化 / 藻類 / クレブソルミディウム / オーキシン / 車軸藻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、陸上植物の主要なオーキシン受容体TIR1やオーキシン応答転写因子ARFを持たない軸藻類クレブソルミディウムにおけるオーキシン応答において、その一次応答に関与する転写因子の同定と機能解析を行う事により、陸上植物のオーキシン情報伝達経路の出現過程の解明を目指すものである。 前年度までにクレブソルミディウムの一次応答に関わる転写因子としてB3ドメインを持つ転写因子を同定し、この転写因子によって誘導される複数のオーキシン応答遺伝子を決定することができた。またこの転写因子がホモダイマーを形成することを示した。 本年度は、この転写因子とプロモーター配列の相互作用についてさらなる解析を進めた。 転写因子のDNA結合部位のリコンビナントタンパク質を大腸菌により生産・精製し、オーキシン応答遺伝子のプロモーター領域に対する結合能をゲルシフトアッセイおよびDNaseIフットプリント法により解析した。その結果、この転写因子はオーキシンの初期応答遺伝子であるKnLBD1のプロモーター配列に直接結合する一次応答因子である事が示された。また、この解析により転写因子結合サイトの位置を同定することができたが、RNA-seqデータより推定していた結合配列とは異なっており、クレブソルミディウムのオーキシン応答は、本研究で同定した転写因子の他にも関わる転写因子の存在が推定された。RNA-seq情報はオーキシン処理後3日目、7日目と、より後期のオーキシン応答情報も含まれているため、オーキシンの一次応答が伝播し、複雑な応答を引き起こした結果と考えられる。したがって、本研究で明らかにした転写因子に基づき、その上流、下流を解析することにより、クレブソルミディウムにおけるオーキシン応答の役割を解明する礎となることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による遅れを取り戻し、本研究の主要な目標の1つである、クレブソルミディウムにおけるオーキシン一次応答に関与する転写因子について、ほぼ決定的な結果を得る事ができた。計画は順調に進行しており、次年度を最終年度として研究計画全体の達成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究結果を論文化し公表するための追試や、さらなる機能解析としてゼニゴケの類似転写因子の変異株の表現型の解析、まだ達成できていないクレブソルミディウムの形質転換について研究を進め、研究課題の達成を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響のため、実験が遅延し試薬・消耗品の使用量が減少した。また学会がオンラインによって行われたため、旅費は使用せず、次年度使用額が生じた。以上により研究計画の遅延を取り戻すため実施計画を延長し、次年度使用額を用いて実施できなかった実験を推進し、研究課題の達成を目指す。
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Research Products
(2 results)