2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 知生 京都大学, 理学研究科, 講師 (20281587)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膜交通 / 液胞輸送 / シロイヌナズナ / kam2変異体 / ショ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体や液胞などの内膜系オルガネラは、小胞輸送に代表される「膜交通」と呼ばれるシステムでタンパク質などをやり取りしている。植物細胞の膜交通の分子基盤は他の真核生物と大きくは変わらないが、植物固有の発生や生理に応じて植物独自のシステムを発展させている。本研究は植物細胞の膜交通の新たな役割を明らかにすることを目的とする。本研究は申請者らが単離解析してきた液胞輸送変異体kam2がショ糖要求性という想定外の表現型を示すことに端を発している。発芽時のショ糖合成にはオイルボディ、ペルオキシソーム、ミトコンドリアが関与することが知られている。しかし、これまで膜交通とショ糖合成の間には密接な関係は想定されていない。膜交通変異体がショ糖要求性を示すことに着目し、膜交通因子がどのようにショ糖代謝に機能しているのかを明らかにし、植物細胞の「膜交通」の新たな役割を解明する。 発芽時の光強度や固形培地の硬さに応じて、kam2変異体のショ糖要求性の割合が変化することが判明した。このことは、kam2変異体のショ糖要求性が遺伝的な要因だけでなく、環境要因によっても左右されることを意味している。発芽時の芽生えにおける中性脂質TAG量を測定したところ、kam2変異体でも野生型と同様に減少していることが判明した。よって、オイルボディに蓄えられた中性脂質が代謝され、ショ糖が合成されるまでの間に何らかの異常が生じている可能性が示唆された。実際に、中性脂質からの代謝の副産物が発芽成長に悪影響を与えていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らが単離解析してきた液胞輸送変異体kam2は発芽成長時にショ糖要求性という想定外の表現型を示す。今年度は、kam2変異体のショ糖要求性を緩和する生育条件をいくつか見出した。kam2変異体のショ糖要求性の直接の原因はまだ判明していないが、今後の解析の示唆が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
芽生えにおけるKAM2タンパク質の挙動を解析するため、GFPなど蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現する形質転換シロイヌナ ズナを作出し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてその細胞内局在性を調べる。また、脂質からショ糖合成 に至る経路に存在するオイルボディやペルオキシソームなどを可視化し、発芽成長時の挙動に異常がないか調べる。また、KAM2や液胞との局在性も調べる計画である。さらに、KAM2-GFPなどを発現する形質転換シロイヌナズナを作出し、蛍光タンパク質の抗体を用いたプルダ ウン実験を行い、精製された複合体について質量分析による解析を行ない、相互作用因子の解析を行う。出発材料には発芽後の実生を用いることで、発芽時の脂質分解に関わる相互作用因子を同定することを計画している。有力な相互作用因子については、T-DNAタグラインまたはCRISPR法 によるノックアウト変異体を作出し、発芽成長時のショ糖要求性の有無を検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた3つの計画のうち、1つから予想外に本質に迫る結果が得られたため、計画を変更したことにより、未使用額が生じた。このため、残りの2つの計画については次年度に行うこととし、未使用額はそれに充当することとしたい。
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