2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K06287
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 慎吾 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10192626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 晃之 甲子園大学, 栄養学部, 講師 (90408716)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビリン / 葉緑体運動 / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
ビリンは動植物に広く保存されるアクチン結合蛋白質で、アクチン繊維の束化、切断、キャッピング、重合・脱重合など、アクチン細胞骨格の構築変化に直接関わる多様な活性を持ち、それらがCa2+濃度、リン脂質結合、リン酸化などによって制御される。その多機能性から、基本的かつ重要な細胞機能の制御に関わると予想されているが、植物ビリンについて、その多機能性に注目した研究例は無い。我々は、光合成の最適化に寄与する葉緑体アンカー機構の解析を通して、ビリンが、環境条件の変化に伴うCa2+シグナルをアクチン細胞骨格に伝える役割を果たしているという仮説を導いた。これまでに、維管束植物であるホウレンソウ、シロイヌナズナを用いて、異なるビリン分子種が役割を分担して制御に関与していることを示唆する結果を得てきた。 本研究では、ビリンが関与する葉緑体アンカー制御機構が、植物の陸上化に伴って獲得された仕組みなのかを検証する目的で、基部陸上植物である苔類ゼニゴケを実験材料に選んだ。ゼニゴケが単一のビリン様遺伝子を持つことを見出し、CRISPR/Cas9法によって、その破壊株の作製に成功した。破壊株では、強光によって誘導される葉緑体逃避運動の開始が遅れることに加え、葉状体が光に向かわず、平坦に大きく成長するという予想外の表現型異常が検出された。ゼニゴケビリンは、葉緑体アンカー制御だけでなく、器官や組織レベルでの光応答反応にも関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CRISPR/Cas9法により作製した2つのMpVLN1欠損株ラインにおいて、葉緑体逃避運動の遅れ、葉状体形体の異常、葉状体成長亢進という、共通の異常が検出された。葉状体の異常については予想外であったため、解析に時間を要している。また、これらの欠損株にMpVLN1と蛍光蛋白質との融合遺伝子を発現させるためのコンストラクトを作成したが、形質転換の条件検討がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
MpVLN1欠損株が示す表現型異常の要因の特定を目指し、葉緑体の運動性、葉状体の細胞サイズ、細胞分裂域の分布、仮根の伸長様式とアクチン細胞骨格に注目して解析を進める。また、MpVLN1欠損株にMpVLN1と蛍光蛋白質との融合遺伝子を発現させ、表現型の異常が回復するかを確認し、MpVLN1の細胞内局在を決定する。
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Causes of Carryover |
MpVLN1遺伝子破壊株にMpVLN1遺伝子と蛍光蛋白質との融合遺伝子を発現させる形質転換に予想以上の時間がかかり、形質転換株培養のための物品費(実験器具、薬品など)、謝金を使用しなかった。
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Research Products
(6 results)