2018 Fiscal Year Research-status Report
植物の光応答時の翻訳効率および翻訳開始点の変化についての解析
Project/Area Number |
18K06304
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
栗原 志夫 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (60455342)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光応答 / 翻訳変化 / 転写開始点 / 翻訳開始点 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は発芽後、光を受容し、遺伝子発現プロファイルを劇的に変化させ、形態形成を進めていく。これまでの研究から、植物を暗所から光の下に移したとき、多くの光応答遺伝子の転写開始点の位置が変化することがわかってきた。転写開始点の違いによって、mRNAの翻訳効率や翻訳開始点の位置が影響を受けることが示唆された。そこで本研究では、シロイヌナズナ幼苗を暗所から光下に移したときにおこるmRNAの翻訳効率の変化とmRNA上の翻訳開始点の変化をゲノムワイドに検証することを目的とした。 これまでに暗所で育てた幼苗に青色単色光を照射したときの転写開始点の位置変化の情報を取得していた。今回、同条件におけるリボソームプロファイリングを行いゲノムワイドな翻訳の変化を調べた。その結果、青色光の照射によって、1763個の遺伝子の翻訳効率が有意に上がること、844個の遺伝子の翻訳効率が有意に下がることがわかった。その中で、多くの葉緑体関連の遺伝子やmicroRNA生合成遺伝子が、翻訳効率が上がる遺伝子群に含まれることが見えてきた。植物は光を受けて初めて光合成や形態形成を始める。そのために必要な遺伝子群の翻訳効率が上がることは非常に合理的であると考えられる。 暗所では転写開始点がuORFの上流であるが、青色光照射によってuORFの下流に移動する遺伝子が220個見つかっていた。青色光照射によって、それらの遺伝子群の多くで、翻訳効率が上昇することがわかった。つまり、転写開始点依存的にuORFによる遺伝子発現抑制を免れる機構があることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた通常のリボソームプロファイリングを行い、暗所で育てたシロイヌナズナ幼苗の青色光への応答による翻訳変化を調べた。その結果、青色光の照射によって、1763個の遺伝子の翻訳効率が有意に上がること、844個の遺伝子の翻訳効率が有意に下がることがわかった。その中で、多くの葉緑体関連の遺伝子やmicroRNA生合成遺伝子が、翻訳効率が上がる遺伝子群に含まれることが見えてきた。さらに次に行う翻訳開始点を決定するためのリボソームプロファイリング法の検討も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、翻訳開始点を明らかにするためにリボソームを翻訳開始点に留めることができる薬剤の植物への処方方法を検討しているところである。さらに通常のリボソームプロファイリングデータを用いた翻訳開始点の同定も試みていく。今後は、青色光への応答時の翻訳開始点の位置および変化を同定し、転写開始点との位置関係を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
研究は計画に準じて順調に進んでいるが、該当額を翌年度分と合わせて使用することが効率的である。したがって、平成31(令和元)年度の研究計画であるリボソームプロファイリングによる翻訳開始点の同定のために使用していく。
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Research Products
(5 results)