2018 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of nodulation by phytosterols
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18K06305
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 明広 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (50752953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 宜司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (80415455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共生 / 根粒菌 / 植物―微生物相互作用 / ステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
共生変異体castorに根粒を形成できるようになるPSAT機能欠損の変異株は、野生株には存在するステロールエステルを生成することができず、また一部フリーステロール量が野生株よりも増加していた。ミヤコグサPSATは既に報告のあるシロイヌナズナPSATのオルソログだが、このステロールプロファイリングによってミヤコグサPSATがステロールの恒常性に寄与していることを明らかにした。ミヤコグサPSATは細胞内の小顆粒に局在しており、主に根の維管束で強いプロモータ活性が観察された。これらもシロイヌナズナPSATの特徴と矛盾しない結果であった。相同性解析の結果、マメ科植物もシロイヌナズナと同様にPSATを1つだけ持つことから、植物一般に保存されていると思われるPSATの機能の一部が根粒共生制御に流用された可能性が考えられる。 作成したcastor psat二重変異株は根粒形成のタイミングが野生株よりも遅く、また表皮における感染イベントは全く観察されなかった。この結果は、二重変異体における根粒共生は通常の感染様式を経ていないことを示している。根粒菌の存在下で表皮における共生シグナル伝達が動いていないにも関わらず、皮層における根粒原基形成が誘導されていることは、根粒共生の複雑なシグナル経路を理解していくうえで興味深い。二重変異株の根粒内部には、野生株よりも多少密度は低いもののバクテロイドが存在しており、根粒原基内での感染メカニズムは通常通り起動したように見えた。 PSATの遺伝学的な上位性を調べるために、様々な共生変異株とpsat変異株との二重変異体の作成を継続して行っている。castor psat二重変異株は作出を終え、前述の共生Kineticsの調査に使用した。 ステロールによる共生の制御はこれまで報告がなく、植物―微生物相互作用分野に本研究が与えるインパクトは小さくない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に予定していた研究項目について、大きな問題もなく実施することができた。当該年度の進捗状況を以下に記す。 1.野生株とpsat変異株のステロールプロファイルを得た。ミヤコグサではPSATはステロールエステル生成の鍵酵素であり、野生株で検出されたステロールエステルが変異体では検出限界以下であった。また、シロイヌナズナで報告されているように一部フリーステロールの内生量がpsat変異株で増加していた。 2.根粒共生のKineticsを調べたところ、psat変異株は野生株よりも成熟根粒が少ないこと、castor psat二重変異体(以下、二重変異体)は根粒形成のタイミングが野生株よりも遅く、成熟根粒はさらに少ないことが分かった。psat変異株と二重変異体の地上部生育は野生株よりも共生変異株に近く 、着生した根粒がほとんど窒素固定活性を示さないことが示唆された。psat変異株と野生株とでは差が見られなかった表皮における感染イベントは、接種後4週経っても二重変異体では観察されず、psatの機能欠損はcastorの感染イベントの復帰に作用するのではないことを明らかにした。 3.超薄切片を作成し根粒菌を染色したところ、バクテロイドの密度にやや差異が見られたものの、二重変異体においても感染細胞が観察されたことから、二重変異体でも根粒形成とその感染メカニズムは起動していた。 4.PSATプロモータは根の維管束で強い活性を示し、感染部位や根粒原基などで誘導されることはなかった。またミヤコグサPSATはシロイヌナズナで報告されているように細胞内の小顆粒に局在した。 5.共生関連遺伝子とPSATとの上位性を調べるため、castor psat以外の二重変異体の作成を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究計画をおおよそ順調に実施できたことを受け、研究計画に基づいて当初の予定通り2019年度の研究を以下の通り実施する予定である。 1.2018年度実施のステロールプロファイリングに基づいて、psat変異株で増加していたフリーステロール、検出されなかったステロールエステルに着目して、これら物質の根粒共生への影響を調査する。フリーステロールは市販品を利用し、ステロールエステルはメバロン酸を水耕液に加えることでその内生量を増加させる。また、ステロール生合成に関与する因子をクローニングし共生変異株背景で恒常発現あるいはノックダウンすることで根粒共生にどのような影響を及ぼすか調査する。また、植物ステロールが根粒形成制御に機能するという遺伝学的な裏付けを得るため、ステロール生合成の鍵酵素についてその変異株を入手しcastor psat二重変異株と掛け合わせ、三重変異体を作出する準備を行う。 2.共生Kinetics (2018年度)の結果、「二重変異体は表皮での感染イベントが起こらない」ことが強く示唆された。感染と根粒形成のマーカーであるNINのプロモータ活性等を調べ、また表皮における共生シグナル伝達に必須と考えられているカルシウムスパイキングを測定することで、2018年度の結果を補強する。 3.共生変異株背景でpsatをノックダウンして共生表現型を調査するとともに、2018年度に引き続き様々な共生変異株とpsat変異株との二重変異株を作出し、PSATの遺伝学的な上位性を調べる。
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Causes of Carryover |
交付決定した直接経費では平成30年度に購入予定だった物品全てを購入できなかったため、一部優先順位を変更して研究機器を購入した。平成30年度購入予定だった物品は本年度以降に購入予定。
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Research Products
(5 results)