2020 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of nodulation by phytosterols
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18K06305
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 明広 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (50752953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 宜司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (80415455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共生 / 植物生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度実施した脂質の分析から、共生変異体であるcastor-6の根粒共生を復帰したpsatとの2重変異体のアリルのうち1つ(psat-2)は、ステロールエステルの生成にほとんど影響しないことが分かった。これは、共生復帰変異体castor-6 psat-2における根粒共生の制御には植物ステロールあるいはその誘導体は関与していないことを示唆する。そこで、昨年度の推進方策に記載したように研究計画を一部変更し、共生復帰変異体2アリルとその親株であるcastor-6について、根粒菌の接種(接種後1,2週)・非接種でサンプリングを行いRNA seqを実施した。COVID-19対策のため長期在宅勤務が実施されたことから研究スケジュールが大幅に遅延し、2020年度内にデータの解析を終えることができなかったが、本実験の解析結果から共生復帰変異体におけるPSATの作用機序推定が期待される。 psat-1と他の変異体との二重変異体作出は順調に進んでおり、2020年度はcastor-4 psat-1の作出とその表現型解析を行った。castor-4は1塩基欠損によるフレームシフトにより変異箇所の下流が終始コドンとなる変異体である。psat-1はこのcastor-4背景でも根粒形成を復帰したことから、psat-1はアミノ酸置換変異であるcastor-6と特異的に相互作用するのではなく、CASTORの機能欠損を何らかの形で克服し、根粒共生を復帰するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はCOVID-19防止の観点から長期の在宅勤務が実施され、予定していた研究計画の一部を行うに留まった。進捗状況は以下の通りである。 1.castor-4 psat-1に重変異体の作出とその表現型解析を行った。本二重変異体も根粒共生を復帰したことから、psat-1による根粒共生の復帰はアミノ酸置換変異のcastor-6特異的ではなく、CASTORの機能欠損による共生不全に有効であることが分かった。 2.castor-6復帰変異体CR2のpsat変異D92Nを分離した。二重変異体で行った脂質の分析から、このpsat D92NはSterol acyltransferaseとしての機能を有すると考えられる。psatの別アリルとして、表現型や発現プロファイルなどの調査に利用できる。 3.castor-6、CR1、castor-6 psat-1のRNA seqを実施した。根粒菌非接種、接種1週、接種2週でサンプリングし、それぞれ3反復のRNA seqデータを取得した。psat-1はPSATのSterol acyltransferase活性を失っているが、CR1(psat D92N)を同時に解析することで、ステロール恒常性維持に関わる遺伝子変動を除いたpsat変異による遺伝子変動を抽出することができる。現在、データの解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
PSATの機能欠損による根粒共生の復帰は、これまでのところcastor変異体のみで観察されている。psat-1は、遺伝学的にCASTORと非常に近いところで機能するPOLLUXの変異体背景では根粒共生を復帰しなかったことから、PSATとCASTORには遺伝学的に強い相互作用が見られる。この相互作用を解き明かすため、まずPSATの時空間的な局在を詳細に調べ、CASTORとの物理的な相互作用の可能性を調査する。自己のプロモータでPSAT-YFP融合タンパク質を発現させると、YFP蛍光は中心柱の内側の細胞で小顆粒として観察される。根全体を透明化して共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより、PSAT-YFP融合タンパク質を発現する細胞の3次元的な位置解析を行う。さらに、シロイヌナズナの組織特異的プロモータ-レポータ等を利用することで、PSATが発現している組織の特定を試みる。また、特定のオルガネラをターゲットにする蛍光試薬等を利用して、PSATの細胞内局在の解明を試みる。 PSATの時空間的発現プロファイルがCASTORとの物理的な相互作用を示唆する場合、PSATとCASTORとの相互作用解析を行う。一方、PSATとCASTORとの物理的な相互作用が示唆されない場合、PSATとCASTORとの間に移動性のシグナルが存在すると仮定できる。RNA seqのデータから、PSATとCASTORとを繋ぐメカニズムを推定し検証する。
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Causes of Carryover |
COVID-19対策のため実施された長期の在宅勤務のために研究スケジュールが大幅に遅れたため、一部研究を2020年度に実施できなかったため。 次年度までの研究期間延長が許可されたため、当初の使用計画に基づいて未実施分の研究計画遂行に使用する。
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Research Products
(1 results)