2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K06307
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
美濃川 拓哉 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (60400305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 拓 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60513835)
根岸 剛文 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30726576)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウニ / 後胚発生 / 成体 / 幼生 / 変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幼生とはなにか、成体とはなにか、成体を形作るしくみとはどのようなものか、という後胚発生に関連する発生学上の問題を、後胚発生過程におきる形態形成と幼生構成細胞の機能の観点から理解することをめさしている。この分野は、後胚発生特有の性質に起因する技術的困難さゆえに研究が進んでいない。 近年、申請者は再生・出芽系の利用でこれらの困難を克服する道筋を拓いた。現在、後胚発生機構の諸課題のうち、(1)胚発生と後胚発生が別の細胞によって進行すると考える「set aside cell仮説」と、 (2)胚発生と後胚発生の機構的関連の二点に注目して研究を進めている。 2019年度には、(1)に関連する問題として、ウニ変態期における消化管の形態変化の解析に注力した。正形ウニ類と不正形ウニ類からそれぞれ一種を選定し、その変態期における消化管の形態変化を共焦点レーザー顕微鏡によって詳細に解析している。一連の観察から、変態にともなって幼生消化管がどのように成体消化管に変化していくかについて、時間的にも空間的にも詳しい情報が得られつつある。過去の研究から、変態期における消化管の変化様式には正形ウニと不正形ウニで異なっていることが示唆されていた。我々の解析からもこの2系統で消化管の変化様式に違いは認められるが、その違いは従来考えられていたものとは質的に異なる可能性が明らかになりつつある。 (2)については、再生消化管と再生体腔嚢をもつ個体の成体ボディプラン構築に注目して解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常発生過程における形態形成の解析については、イメージング担当の共同研究者の異動という想定外の変化があった。このため、当初の計画通りの共同研究は困難になり、対応を模索・作戦変更を検討した。結果として、基本的な部分は研究代表者が単独で進め、高度な解析の必要な試料は共同研究者に送付する形で対応することが可能なように調整し、遅まきながらも解析をスタートさせることができている。共同研究者が異動したことは密接な連携を困難にしたものの、異動先に配備されている高性能の共焦点顕微鏡による解析への途が拓かれたという想定外のメリットが得られた点で、今後の研究展開が広がったと考えている。一方、当初計画の主軸としていた体腔嚢の水管系への変遷解析研究には技術的な障害が見つかった。この障害をどう克服・回避するかについての試行錯誤に時間が取られたため、具体的なイメージング研究への着手は当初の計画より遅れている。一方、再生実験からは変態期における内胚葉の形態変化解析の重要性がクローズアップされてきた。これらの状況を鑑み、現在は正常発生における内胚葉の変遷の解析に重点をおいて着手しているが、この研究は順調に進んでいる。本課題に関連して走査型電子顕微鏡による表面形態解析の重要性も明らかになった。これについては当該技術を専門とする研究者と連携し、少しずつではあるが準備を進めている。研究開始当時、重点をおく課題の一つとして位置付けていた中胚葉については、今年度以降、着手する。 再生・出芽実験系に関しては、再生系の研究は順調に進展している。出芽系は条件の検索に時間がかかっているが、これは想定の範囲内である。 全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので、成果の期待できるポイントに集中して研究を進める計画である。イメージング解析は変態期の内胚葉に注目した解析に重点をおく。内胚葉が幼生から成体へ変遷する過程をしっかりと記述することは、中胚葉系の変遷を理解するための基礎固めとして重要であるだけでなく、再生実験系の発展にも影響する可能性があり、最優先事項として捉えている。すでに従来の研究では見逃されていた現象を複数発見した可能性があり、この点については特に重点的に解析を進める計画である。これまでは変態現象の概観を目指して解析を進めてきたが、今後は細胞骨格や繊毛、筋肉系などに注目したより詳細な形態情報の解析を進める計画である。なお、これまでの研究から、走査型電子顕微鏡やより高度な共焦点顕微鏡による解析技術を採用したいという希望を持つに至った。昨年から、こうした技術の導入にむけた検討を、国内外の連携研究者の協力のもとで進めているので、今年度中により具体的な方針を決定し、実際の解析に反映させていきたいと考えている。 再生実験系は、変態能に重点をおいた解析を進める計画である。昨年までの研究から、消化管再生現象の重要性が明らかになっているので、この点に注目した解析を進める計画である。前述の消化管形態変化の情報は再生実験の基礎としても極めて重要であり、新たな知見が得られ次第、再生研究へフィードバックする。出芽実験系は誘導因子探索に難航しているが、これは当初の想定にも含まれていた状況であり、今後も探索を継続する。
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Causes of Carryover |
未使用額は研究代表者・美濃川と研究分担者・根岸で生じた。これは両者が協力して行う予定であった共焦点レーザー顕微鏡による観察が、計画通りに進行しなかったためである。まず、根岸の異動があり、当初は同じ研究機関で協力して解析を進めるはずだった計画を変更せざるを得なかった。調整の末、根岸の助言を得ながら美濃川が独自に基礎的な解析を進め、高度な解析は根岸にサンプルを送付して解析を依頼することになったが、ここに至るまでにいくつかの技術的障害が見つかり、これに対する対策・計画変更に想定以上に時間がかかった。そのために昨年度中には根岸との高度な共同解析に着手できなかった。幸い、技術的問題は解決されたので、次年度に根岸との高度な共同解析に進む予定である。
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