2018 Fiscal Year Research-status Report
The potential role of melanopsin in metabolic regulation
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18K06316
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
孫 ユリ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (10605306)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メラノプシン(Opn4) / メラノプシン発現網膜神経節細胞 / 概日時計 / 非視覚光応答 / 摂食 / 肥満 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体の恒常性は約24時間周期で自律振動する概日時計の働きによって維持されており、概日時計は光の入力と日々決まった時間帯に食事をすることで制御される。概日時計の中枢は視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus;SCN)に存在し、外界の光に同調する。哺乳類の光受容感覚器は目の網膜であり、網膜神経節細胞(retinal ganglion cell;RGC)には青色光受容体であるメラノプシン(別名Opn4)が発現している。このメラノプシン発現網膜神経節細胞(melanopsin-expressing RGC;mRGC)はそれ自体が光受容能を保つとともに、桿体・錐体からの投射も受け、これらの光情報を統合して脳に伝達し、視覚以外の光応答である非視覚応答を担っている。mRGCはSCNをはじめ様々な脳部位に投射しており、mRGCの機能障害が起きると外界の光周期に同調できなくなり、体内リズムの乱れによる睡眠や代謝など様々な生体機能の異常を招くことが考えられる。本研究の目的は「非視覚光応答」と「摂食」といった外界からの入力情報がどのような生体内相互作用により概日時計及び代謝を制御しているのかを明らかにすることである。 本年度には、メラノプシン遺伝子破壊マウスの個体レベルにおける様々な代謝状態を中心的に調べた。具体的には、メラノプシン遺伝子破壊マウスに高脂肪食の自由摂食による肥満を誘導し、体重変化、摂食パターン、活動量及びリズム、ブドウ糖負荷試験 (GTT) とインスリン負荷試験 (ITT) による生体内糖代謝検査を行い、野生型の高脂肪食餌誘発性肥満マウスと比較することで、メラノプシンが担う非視覚光応答の破壊が代謝異常に及ぼす影響を調べた。また、CTによる体脂肪調査やH&E染色による脂肪組織の形態的変化を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常食を与えたメラノプシン遺伝子破壊マウスは野生型に比べ、外観や体重における別状が見られなかったが、長期間にわたり高脂肪食で飼育したことろ、野生型よりも糖代謝やインスリン抵抗性における異常が認められた。このことから、非視覚光応答の破壊は摂食情報に反応する生体内センサーに影響を与え、高脂肪食の入力がうまく処理できなくなり、代謝異常を起こすリスクが高まることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
メラノプシン遺伝子破壊マウスの高脂肪食誘発性肥満モデルにおける脂肪細胞の働きに注目し、細胞・分子レベルの解析を進める。通常食もしくは高脂肪食を与えた野生型とメラノプシン遺伝子破壊マウスから脂肪組織を採取し、初代培養細胞にしたのち脂肪細胞への分化能を比較する。また、採取した脂肪組織における、脂肪代謝、脂肪細胞の白色化及び褐色化制御因子、炎症性変化など様々な遺伝子発現の網羅的解析を行う。
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Causes of Carryover |
1円未満の端数の消費税処理の際に1円の差額が発生した。 この金額は次年度の消耗品購入費として使用する。
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