2020 Fiscal Year Research-status Report
有性化因子を起点に近縁種プラナリアの有性化機構を比較して生殖戦略の進化を紐解く
Project/Area Number |
18K06323
|
Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
前澤 孝信 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (90548398)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 典人 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (60402781)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | プラナリア / 有性化 / 生殖器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種のプラナリアは無性生殖と有性生殖を環境に応じて巧みに転換することができる。リュウキュウナミウズムシOH株を用いて、無性個体に別種の有性個体のミンチを投餌することで有性化させる実験系が確立されている。このことは、有性個体中に有性化を誘導する化学物資(有性化因子)が存在することを示している。また、これまでに有性化因子が複数存在することも明らかになっている。プラナリアは種によって無性状態が異なり、リュウキュウナミウズムシは卵巣原基のみを有するが、近縁種であるナミウズムシは卵巣原基と精巣原基を共に有している。本研究では、様々なプラナリアの有性化機構の共通点と相違点を明らかにすることを目的としている。1年目では、リュウキュウナミウズムシOH株が20℃で有性化因子を投与することで有性化する一方で、ナミウズムシSSP株は14℃という低温下において有性化因子を投与することで有性化することを明らかにした。2年目では、組織切片を作成してHE染色により内部組織を観察することで、精巣の発達について調べた。OH株では、卵巣がst.3まで発達した段階で精巣原基が現れ、st.5にかけて発達していくことが知られている。しかしながら、本年度の結果から、SSP株では、無性状態ですでに存在している精巣原基が、有性化初期から卵巣と同様に発達していくことが明らかになった。3年目では、ヨーロッパ産のSchmidtea mediterraneaの無性系統が有性化するのか検討した。ナミウズムシと時と同様の低温条件を試した所、CIW4株は有性化しなかったが、BCN-10株が有性化した。S.mediterraneaでは染色体の転座のため有性化しないと考えられており、大きな発見といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リュウキュウナミウズムシで確立されている有性化実験系を近縁種のナミウズムシでも応用することができ、精巣の発達に種間差を見出せた。さらに、S.mediterraneaも初めて有性化させることができた。しかし、それらの条件の検討に時間がかかり、有性化因子を用いた実験が次年度に持ち越しとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
トリプトファンをはじめとした複数の有性化因子を用いて、作用する生殖器官を調べて比較することで、種間差を分子レベルで解析する。回り道はしたが、リュウキュウナミウズムシ、ナミウズムシ、S.mediterraneaの3種間の比較というスケールが大きな研究展開となった。
|
Causes of Carryover |
年度末に投稿論文の査読中であった。掲載料を払う可能性があったため、多めに予算を残してした。3月に受理されて掲載料を払い残金が生じたため、次年度に持ち越しになった。
|