2019 Fiscal Year Research-status Report
マウス初期胚におけるWnt/PCPシグナル経路による形態形成制御の解析
Project/Area Number |
18K06324
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
安島 理恵子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (10615066)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Wnt5a / 非古典的Wnt / 平面内極性 / PCP / マウス初期発生 / 結合因子同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の発生においてWnt/PCPシグナル経路は、間葉系細胞の組織伸長と上皮細胞の平面内極性制御という、2つの異なるイベントを制御することで、様々な組織の形態形成を司る。しかし、Wnt/PCPシグナル経路の下流の分子機構は不明のままである。本研究計画では、マウス初期発生においてWnt5aにより制御される2つの形態形成イベント;前後軸伸長ならびにノードにおける平面内極性の構築を焦点に解析を行う。 昨年度までに、Wnt5a刺激有無によりPCPコアタンパク質Pk,Dvlへの結合が変化する因子を複数同定し、得られたDvl, Pk結合が変化するタンパク質の遺伝子欠損マウスを作成を進めてきた。本年度は、引き続き複数の遺伝子欠損マウスの作製と、その遺伝子欠損マウスの前後軸伸長ならびにノードにおける平面内極性の構築における表現型の解析を行った。現在は、Pk,Dvl両方に結合するタンパク質で、かつその遺伝子欠損マウスがノードにおける平面内極性の構築に異常を生じる表現型を示した2つの遺伝子産物の機能に着目し、ノードにおけるこれらのタンパク質の局在の解析、並びに培養細胞を用いた細胞生物学的手法を用いて、機能解析を進めている。 今後は、現在解析を進めている2つのPk,Dvl結合タンパク質の機能解析を進めるとともに、これまでに作成した複数の遺伝子欠損マウスの表現型の解析を進めることで、マウス初期発生においてWnt/PCPシグナル経路により制御される形態形成過程のさらなる理解を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに同定していた、Wnt5a刺激有無によりPCPコアタンパク質Pk,Dvlへの結合が変化する因子には、Pkと Dvl両方に結合する因子が複数含まれていた。これらの因子に焦点を絞り、遺伝子変異マウスを作製・解析したところ、ノードにおける平面内極性の構築に異常が生じる遺伝子変異マウスを複数得ることができた。このことは、本研究課題の基盤となるWnt5aの下流で働く因子が、本研究で採用した方法で同定できていることを示している。 現在2つの因子に絞り、そのたんぱく質の平面内極性の構築における機能を解析している。ひとつはE3ユビキチンligaseで、現在DvlもしくはPkがこのE3ユビキチンligaseのターゲットになるか、またノードにおけるPCPコアタンパク質の非対称局在制御に寄与するか、解析を進めている。もうひとつは繊毛の基底小体を構成する因子として報告があるタンパク質である。この因子は、ノードにおいて繊毛が細胞の尾部側に偏った局在を示す機構に関与する可能性について解析を進めている。これらの因子の機能が明らかになることで、平面内極性の構築のメカニズムの一端を明らかにできると考えている。 さらに複数のPk,Dvl結合因子の遺伝子欠損マウスの作製と解析を並行して進めており、前後軸伸長ならびにノードにおける平面内極性の構築における表現型が明らかになったものに関しては、その機能について解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在機能解析を進めている2つの因子に関しては、生化学ならびに細胞生物学的手法を用いながら、E3ユビキチンligaseに関してはそのligase活性制御、2つの因子に共通して、DvlならびにPkとの結合部位の同定、細胞内局在の解析などを進める。また細胞生物学的手法によって得られた情報をもとに、生体内でそれぞれの因子の結合部位を欠損したマウスの作成や、過剰発現マウスの作成を通して、平面内極性の構築のメカニズムの解析を進める。 さらにWnt/PCPシグナル経路の下流因子候補であるWnt5a刺激依存的にDvl, Pk結合する因子は、現在解析を進めている2つの因子の他にも多数同定されているため、さらに複数の遺伝子変異マウスの作製と解析を進める予定である。現時点では前後軸伸長に異常を生じる結合因子の遺伝子変異マウスは見つかっていないため、機能的に組織の伸長を誘導する細胞運動に関わるような因子を優先して遺伝子変異マウスの作製を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究において、当初の計画より細胞生物学的研究に重点を置いたため、実験動物を購入する費用が予定より少なかった。翌年度は新たな遺伝子変異マウスの作製を進めるため、次年度に物品費として使用予定である。
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