2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス初期胚におけるWnt/PCPシグナル経路による形態形成制御の解析
Project/Area Number |
18K06324
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
安島 理恵子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (10615066)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Wnt5a / 非古典的Wnt / 平面内極性 / マウス初期発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の発生においてWnt/PCPシグナル経路は、間葉系細胞の組織伸長と上皮細胞の平面内極性制御という、2つの異なるイベントを制御することで、様々な組織の形態形成を司る。しかし、Wnt/PCPシグナル経路の下流の分子機構は不明のままである。本研究計画では、マウス初期発生においてWnt5aにより制御される2つの形態形成イベント;前後軸伸長ならびにノードにおける平面内極性の構築を焦点に解析を行う。 昨年度までに、Wnt5a刺激有無によりPCPコアタンパク質PK,DVLへの結合が変化する因子を複数同定し、その因子の遺伝子欠損マウスの作成・解析を進めてきた。解析の結果、PK,DVL両方に結合するタンパク質のうち2つの因子の遺伝子欠損マウスがノードにおける平面内極性の構築に異常を生じる表現型を示すことがわかった。ひとつはE3ユビキチンライゲースでもうひとつは繊毛の基底小体構成因子であった。本年度は、主にE3ユビキチンライゲースの機能解析を進めた。細胞生物学的解析により、PKがこのE3ユビキチンライゲースのターゲットとなり分解を受ける可能性が示唆された。一方DVLタンパク質はターゲットとならない可能性が高かった。ノードにおいてこのE3ユビキチンライゲースは主に細胞質に局在したが、一部膜上においてPCPコアタンパク質と共局在することがわかった。 今後は、現在解析を進めている2つのPK,DVL結合タンパク質の機能解析を進めるとともに、これまでに作成した複数の遺伝子欠損マウスの表現型の解析を進めることで、マウス初期発生においてWnt/PCPシグナル経路により制御される形態形成過程のさらなる理解を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに同定していた、PK,DVL両方に結合するタンパク質で、その遺伝子欠損マウスがノードにおける平面内極性の構築に異常を生じる表現型を示す2つの因子に関して、様々な機能解析を進めた。 本年度は主にこの因子のひとつであるE3ユビキチンライゲースの機能解析を進めた。 このE3ユビキチンライゲースと、DVLとPKの結合を確認し、それぞれ異なる部位で結合することを明らかにした。 当初、E3ユビキチンライゲースの過剰発現によるDVLならびにPKの分解を培養細胞ならびに個体におけるノードで解析を行なったが、このE3ユビキチンライゲースの内在性のタンパク質の発現が高かったため、過剰発現によるDVLとPKタンパク質量の影響は見られなかった。そこで、方針を転換し、E3ユビキチンライゲースを欠損することによるDVLとPKタンパク質量の解析を行った。その結果、E3ユビキチンライゲースを欠損した細胞では、PKタンパク質量が亢進することが確認された。一方DVLのタンパク質量には差が見られなかった。これらの結果により、このE3ユビキチンライゲースがPKのタンパク質分解を介して平面内極性を制御する可能性を明らかにできた。 もう一つの因子である繊毛の基底小体構成因子に関しても、DVLならびにPKとの結合部位の同定、ノード細胞における局在の解析を行なった。この後の機能解析の基盤となる基本的なデータが順調に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在機能解析を進めている2つの因子の内、E3ユビキチンライゲースに関しては、本年度に解析によりPK2がターゲットになる可能性が示されたため、実際にPK2がこのE3ユビキチンライゲースによりユビキチン化を制御されているか確認を行う。また、ノードでこのE3ユビキチンライゲースが欠損した際の、PK2の局在を解析することで、PK2の分解によるノードにおける平面内極性形成機構の一端を明らかにする。 繊毛の基底小体構成因子に関して、本年度の細胞生物学的手法によって得られた情報をもとに、生体内でそれぞれの因子の結合部位を欠損したマウスの作成や、過剰発現マウスの作成を通して、平面内極性の構築のメカニズムの解析を進める。 さらにWnt/PCPシグナル経路の下流因子候補であるWnt5a刺激依存的にDvl, Pk結合する因子は、現在解析を進めている2つの因子の他にも多数同定されているため、さらに複数の遺伝子変異マウスの作製と解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、得られた知見の発表ならびに情報収集のために参加予定だった学会がオンラインでの開催になったため、旅費を使用することがなかったため。
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