2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06330
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
佐藤 綾 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 客員研究員 (60378560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教(特定有期雇用) (30432016)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 概潮汐時計 / 時計遺伝子 / 潮汐サイクル / 潮間帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
潮間帯に広がるマングローブに生息するコオロギの一種のマングローブスズは,昼夜に対応した約24時間周期の活動リズム(概日リズム)に加えて,潮汐に対応した約12.4時間周期の活動リズム(概潮汐リズム)を示す.本研究課題は,マングローブスズがもつ潮汐に対応した体内時計(概潮汐時計)の分子基盤の解明を目的としている.初年度にあたる当該年度では,概潮汐時計を司る時計遺伝子の候補となる遺伝子を特定するため,トランスクリプトーム解析を行い,発現量が約12.4時間周期で変動する遺伝子を網羅的に調べた。その結果,284個の遺伝子の発現量が,有意に概潮汐振動することが明らかになった。これら遺伝子の配列をNCBIのデータベースと照合した結果,概潮汐振動する遺伝子には,代謝に関わる遺伝子,分子シャペロン,小胞体で機能する遺伝子,DNA結合に関わる遺伝子などが含まれることが明らかになった。また,マングローブスズのゲノム配列をおおまかに決定し,遺伝子構造の推定を行った。 これまで概潮汐時計についての研究は,主に水生甲殻類を対象に行われてきたが,現在までのところ,概潮汐時計遺伝子はどの生物種においても特定されていない。ただ,概日時計遺伝子と同様に,転写因子として機能する遺伝子が概潮汐時計遺伝子として重要であることが予想されている。当該年度の研究により,概潮汐振動する遺伝子としてDNA結合に関わる遺伝子が複数同定されており,これらが概潮汐時計遺伝子として機能している可能性がある。今後,これらの遺伝子を体内でノックダウンさせた個体を作製して,活動リズムがどのように変化するのか解析することにより,概潮汐時計遺伝子の特定につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,マングローブスズの概潮汐時計遺伝子の特定を目標として,まず初年度はマングローブスズのトランスクリプトームとゲノムの網羅的な解析を計画しており,計画通り解析を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,当該年度で絞り込んだ概潮汐時計の候補遺伝子の発現量をRNA干渉(RNAi)法で抑制して,概潮汐リズムに与える影響を解析することで,概潮汐時計遺伝子の特定をすすめる.RNAi法では,候補遺伝子の二本鎖RNAを作製し,成虫の腹部に注入して,候補遺伝子の発現量を抑制する.RNAを投与した実験個体の自由継続リズムを全暗条件下で計測して,概潮汐リズム消失を確認する.発現量の抑制の程度は,リアルタイムPCRを行い定量化する.
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Causes of Carryover |
次世代シークエンス解析外注などが計画よりも安く済んだため,次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて,活動リズム解析に使用する計画である。
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