2019 Fiscal Year Research-status Report
The analysis of the function of cerebellar neural circuitry in fear conditioning
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18K06333
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 貴史 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50324760)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小脳 / 神経発生 / ゼブラフィッシュ / 顆粒細胞 / 恐怖応答 / 条件付け / 社会性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、恐怖を伴う情動における小脳神経回路の役割を明らかにすることを目的としている。ゼブラフィッシュをモデル動物として小脳神経回路の恐怖条件付けにおける役割の解明を試みた。小脳を含む神経回路の活性をモニターあるいは制御する遺伝子改変フィッシュ(Tg)を作製した。これまでに報告されている光遺伝学ツールに加えて、カチオンチャネル、GtCCR4やアニオンチャネル、GtACR1/2などをニューロンに発現するTgを作製した。また、光遺伝学ツールがゼブラフィッシュで有効に機能するかを確認するために仔魚を用いて、特定の領域に光を照射することによって誘発される行動を解析するアッセイ法を構築した。成魚を用いた能動的回避学習のシステムを構築するために、狭い通路を通じて往来できる2つのコンパートメントに分割された水槽に電極と緑色LEDを付けた装置を作製した。電気ショックとLED点灯を組み合わせたパラダイムで能動的回避学習を調べたところ、小脳顆粒細胞やプルキンエ細胞をボツリヌス毒素で機能阻害した成魚において学習個体の割合が低下していた。これらの魚では、運動機能に異常は見られなかった。以上のことから、回避学習に小脳が重要な働きをしていることが明らかとなった(論文投稿準備中)。さらに近年の研究で、小脳が自閉症の発症に関与していることが示唆されている。そこで、自閉症のモデルとしてゼブラフィッシュを用いた社会性行動の解析を行うシステムの構築を試みた。社会性行動として、魚が他の魚と同じような行動をとる同調行動を指標とした。二つの水槽に魚を入れ、互いに視認できるときの行動を解析することによって同調行動を解析した。小脳神経阻害魚において同調行動に異常が観察されたことから、社会性行動に小脳の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した事柄のうち、以下のように研究の進展が見られた。本研究に使用する遺伝子改変フィッシュ(Tg)の作製した。神経活動を制御するため、カチオンチャネルGtCCR4やアニオンチャネルGtACR1/2などを発現するTgを作製した。また、ニューロンの電位をモニター(voltron)するTgを作製した。さらに、これらの光遺伝学ツールがゼブラフィッシュで機能するかを確認するために仔魚の遊泳行動を指標としたアッセイ方法を構築した。パターン照射装置を用いて、ゼブラフィッシュ仔魚の限定された脳領域(後脳)に適切な波長の光を照射することによって誘発される遊泳行動をモニターした。仔魚を用いた恐怖条件付け学習における小脳の役割を解析するために、ニトロレダクターゼを小脳神経細胞に発現するTgを作製した。このTgの成魚にメトロニダゾールを投与することによって細胞死を起こすことを確認した。成魚を用いた能動的回避学習のシステムを構築するために、狭い通路を通じて往来できる2つのコンパートメントに分割された水槽に電極と緑色LEDを設置した装置を作製した。電気ショックとLED点灯を組み合わせたパラダイムで回避学習を調べたところ、小脳顆粒細胞やプルキンエ細胞をボツリヌス毒素で機能阻害した成魚において運動能力に変化はないにも関わらず、学習能力が低下していた。以上のことから、回避学習に小脳が重要な働きをしていることが明らかとなった。自閉症のモデルとしてゼブラフィッシュを用いた社会性行動の解析を行うシステムの構築を試みた。社会性行動として、魚が他の魚と同じような行動をとる同調行動を指標とした。二つの水槽に魚を入れ、互いに視認できるときの行動を解析することによって同調行動を解析した。小脳神経阻害魚において同調行動に異常が観察されたことから、社会性行動に小脳の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験を継続して行う。すべての小脳顆粒細胞の活性を阻害したゼブラフィッシュ(cbln12プロモーター)や小脳プルキンエ細胞(aldocaプロモーター)を阻害した仔魚(生後20日)での恐怖条件付けの実験を行う。学習過程で活動が上昇する小脳ニューロンがどのような細胞であるかを解析する。また、新たに作製したTgにおいて、光遺伝学ツールが有効に使用できることを光刺激による遊泳行動の誘発によって確認する。成魚を用いて能動的回避学習における小脳の役割を解析するため、小脳神経を阻害した魚で実験を行う。さらに当研究室で作成された変異体(reelin、fat2、ca8、aldocaなど)を用いて能動的回避学習実験を行い、恐怖応答における小脳の役割を明らかとする。能動的回避学習における小脳の役割についての論文を投稿する。 近年の研究で、小脳機能が自閉症に関与する報告がなされてきた。ゼブラフィッシュを用いた社会性行動を評価する実験系の確立を行う。その一つとして、魚が他の魚と同じような行動をとる同調行動を解析するシステムを構築した。ゼブラフィッシュの小脳機能阻害魚における同調行動の詳細な解析を行うことによって、社会性行動における小脳の役割を調べる。また、これらの行動によって小脳のどのようなニューロンが活性化するのかをc-fosの発現などを調べることによって解析する。 以上の実験から、小脳の高次脳機能における役割を明らかとする。
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Causes of Carryover |
当年度に購入の消耗品が、購入予定より少なかった。翌年度の古典的恐怖条件付け学習の実験に必要な消耗品の購入に使用する。また、光遺伝学ルールの導入並びトランスジェニックフィッシュの組織学的解析に必要な試薬を購入する予定である。
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[Journal Article] Role of Reelin in cell positioning in the cerebellum and the cerebellum-like structure in zebrafish.2019
Author(s)
Nimura T, Itoh T, Hagio H, Hayashi T, Di Donato V, Takeuchi M, Itoh T, Inoguchi F, Sato Y, Yamamoto N, Katsuyama Y, Del Bene F, Shimizu T, Hibi M.
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Journal Title
Dev Biol.
Volume: 455
Pages: 393-408
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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